「サンボーンを聴きまくる会」

【追悼ムック 『デイヴィッド・サンボーン 巨星の足跡』 出版記念】

 

8月31日(土曜日) 15:30~18:00

参加費無料 : 飲食代金のみ

 


本年5月に逝去したデイヴィッド・サンボーン。その偉大な足跡をまとめたムック『デイヴィッド・サンボーン 巨星の足跡』が8月22日にシンコーミュージック・エンタテイメントから発刊されます。この本は、盟友マーカス・ミラーの追悼文に始まり、バイオグラフィーディスコグラフィー、多角的な論考や貴重なインタヴュー、400枚超の参加作品リストなどから、半世紀にわたるサンボーンの活動を徹底紹介するものです。

いーぐるでは、その出版を記念して「サンボーンを聴きまくる会」を開催します。ここでは詳しい解説は同書にゆずり最小限の紹介で、ヒット・リーダー作はもちろん、多ジャンルの参加作品やレア音源など、さまざまなサンボーンの演奏を「聴きまくって」いきます。ナビゲーターは同書編集の池上信次。

 

いーぐるのオーディオ・システムでサンボーンの音楽をたっぷりとお楽しみください。当日は同書の販売も行ないます。

 

ナビゲーター : 池上信次

 

 

いーぐる  新宿区四谷1-8ホリナカビルB1F  3357-9857

【いーぐるホームページ】 http://www.jazz-eagle.com/

【いーぐる後藤の新ジャズ日記】 http://d.hatena.ne.jp/eaglegoto/

【いーぐる 連続講演】

  •   第714回   8月10日 (土曜日) 15:30 より

参加費:1200円 + 飲食代金

 

『移民都市、ニューヨークの音楽:世紀末から1930年代まで』

~10回連続講演「時空を超えるジャズ史」第4回~

 

古い音楽と最新の音楽を組み合わせて、ジャズの歴史を今までなかった視点から捉え直す連続講演「時空を超えるジャズ史」の第4回です。アメリカ最大の都市ニューヨークは、ヨーロッパからの「新移民」、カリブ海からのラテン系移民、そして南部から移住してきたアフリカ系の人々が入り交じる雑居都市でもあります。19世紀末から1930年代ぐらいまでにニューヨークに生まれた音楽を、新しい音源を交えて紹介します。

 

*なお、この連続講演は2024年4月から2025年3月まで、全10回を予定しています。現在のところ予定されている日程は以下の通りです(日程は変更する可能性があります)。

 

第1回:2024年4月27日(終了) 第2回:2024年6月8日 (終了)

 第3回:2024年7月13(終了)

第4回:2024年8月10日  第5回:2024年9月7日  第6回:2024年10月26日

第7回:2024年11月16日  第8回: 2024年12月21日  第9回:2025年1月25日

第10回:2025年2月22日

 

 

出演:村井康司(音楽評論家) 

 

いーぐる  新宿区四谷1-8ホリナカビルB1F  3357-9857

【いーぐる 連続講演】

 

  •   第713回  8月3日 (土曜日)  15:30 ~ 18:00

参加費:無料 飲食代金のみ

 

『ジャズ喫茶選曲のキモはパーカー派アルト』    

 

~ジャズ喫茶発、新星堂コンピCD : シリーズ第17弾発売イヴェント~

 

海外のジャズ・ファンからも好評のJAZZ KISSA 発コンピCDシリーズ、第17弾は「パーカー派」と呼ばれたダンジャズの開祖チャーリー・パーカーの影響を受けたアルト奏者、ジャッキー・マクリーンフィル・ウッズらの特集です。

 

もちろん、元祖パーカーの極め付き壮絶即興演奏も収録。しかし、実は本質的部分でパーカーの音楽を継承できなかった「パーカー派」とご本人の違い、そしてその「ある部分」を継承したともいえるオーネット・コールマンエリック・ドルフィーらとパーカーの関係も詳しく解説いたします。

 

こうしたジャズにおける「本質的問題」について、音楽評論家村井康司さんと、親しく語り合う楽しいイヴェントです。ぜひお気軽にご参加ください!

 

 

*当日CD即売あり。

*イヴェントの模様はyou tube で生配信いたします。

 

 

司会 : 村井康司   解説 : 後藤雅洋

 

いーぐる  新宿区四谷1-8ホリナカビルB1F  3357-9857

【いーぐるホームページ】           http://www.jazz-eagle.com/

【いーぐる後藤の新ジャズ日記】     http://d.hatena.ne.jp/eaglegoto/

【いーぐる 連続講演】

 

  •   第712回   7月20日 (土曜日) 15:30 より

参加費:1200円 + 飲食代金

 

『祈りと聖なる空間』

~ 横断的クラシック講座 : 第21回 ~

コロナのため中断していた林田直樹さんの横断的クラシック講座が再開されます

                     〈講演内容〉

他のジャンルの音楽にはそれほどみられず、クラシック音楽にとりわけ多いのが「祈り」の音楽。宗教への忌避感が強まる現代でも、その人気は高まる一方です。古今のさまざまな祈りの音楽を集めて、その本質に迫ってみたいと思います。

 

 

             解説 : 林田直樹

 

いーぐる  新宿区四谷1-8ホリナカビルB1F  3357-9857

【いーぐる 連続講演】

  •   第711回   7月13日 (土曜日) 15:30 より

参加費:1200円 + 飲食代金

『ジャズの故郷、ニューオリンズ音楽の歴史

:バディ・ボールデンからジョン・バティステまで』

~10回連続講演「時空を超えるジャズ史」第3回~

 

古い音楽と最新の音楽を組み合わせて、ジャズの歴史を今までなかった視点から捉え直す連続講演「時空を超えるジャズ史」の第3回です。第1回でもニューオリンズ音楽を、キューバやブラジルの音楽との関連で紹介しましたが、今回は19世紀から現在までのニューオリンズの音楽をほぼ時系列で紹介します。「ジャズの故郷」と呼ばれているニューオリンズ音楽の特殊性、現在にまで継承されているリズムやサウンドの独自性について考えます。

 

*なお、この連続講演は2024年4月から2025年3月まで、全10回を予定しています。現在のところ予定されている日程は以下の通りです(日程は変更する可能性があります)。

 

第1回:2024年4月27日(終了) 第2回:2024年6月8日 (終了) 第3回:2024年7月13

第4回:2024年8月10日  第5回:2024年9月7日  第6回:2024年10月26日

第7回:2024年11月16日  第8回: 2024年12月21日  第9回:2025年1月25日

第10回:2025年2月22日

 

 

出演:村井康司(音楽評論家) 

 

いーぐる  新宿区四谷1-8ホリナカビルB1F  3357-9857

「青ひげ公ことジル・ド・レとユディト、あるいはジャズとクラシックの危険な関係

 

 上原ひろみや挟間美帆ら現代日本を代表するジャズ・ミュージシャンがストリングス・カルテットと共演し、ジャズの表現領域を広げているのを見、ジャズ喫茶オヤジとて一応クラシック音楽も聴いてみようと、話題の「The MET Orchestra」をサントリー・ホールに観に行きました。

 

 出し物は演奏会形式のオペラ「青ひげ公の城」。まあ、音に聞くメトロポリタン歌劇場管弦楽団だけに、出てきた音のコク、艶、圧倒的ダイナミックレンジの大きさには圧倒されましたね。その大音量にメゾソプラノ、バスバリトンのお二方がまったく負けてないのにびっくり!オペラ歌手の声量、恐るべし。クラシック評論家ではないので音楽内容については「凄かった・驚愕」とだけとりあえずご報告しておき、これはジャズ・ファンじゃなきゃ気が付かない「妄想」あるいは「実感」をひとつだけ。

 

 クラシックのオーケストラはヴァイオリンなどの音程を合わせるため、開演前にチューニングすることはみなさんご存じかと思いますが、METのそれは異常に長く、しかも人数が多い。えんえん金管やらコントラバスやらが「騒音」に近い試演を繰り広げるのですが、私なぞが聴くと妙に「音楽的」なのですね。もちろん勝手に自分のパートを練習しているので、当然「合わせて」いるわけじゃないのは素人の私のもわかるのですが、これがけっこう心地良いのです。

 その「心地良さ」の理由を探るうち、「そう言えば」と膝を打ったのです。大昔オーネット・コールマンが来日し「アメリカの空」をオーケストラと共演したのですが、その時の「気分」に近いものがあるんですよ、彼らの「練習」には。

 

 そうだ、音楽そのものではなく、ストーリーについては門外漢の私が「感想」を述べてもバチは当たらないでしょう。ジル・ド・レはあのジャンヌ・ダルクと共に戦った名司令官なんですが、結婚相手の名がユディットというんで、てっきり私生活では悪名高いド・レの首を伝説の猛女、ユディットが切っちゃうのかとドキドキしながら観ていたんですが、意外のハッピー・エンド。ぜんぜん事前に想像した「危険な関係」じゃないんです。

 

 なんてことを思いながらわが店「いーぐる」に戻ってみたら、なんと今観て来たばかりのMET楽団員が3人も店で寛いでいる。イングリッシュ・ホーン、オーボエヴィオラの男女お三方。「明日は台湾だ」などと言いつつ「店の外観を撮影していいか?」 と聞くので、不思議に思うと、イングリッシュ・ホーン奏者氏はyou tube に凝っているというのですね。

 ジャズ喫茶オヤジがMETを観、今観たばかりのMET楽団員が終演後ただちにジャズ喫茶に訪れるなんて、まさにジル・ド・レとユディット以上にジャズとクラシックは「危険な関係」なのかも(笑)。

 

『昭和レトロなジャズ喫茶論』

 

集英社クオータリーから刊行された 「コトバ」56 に掲載された、菊地成孔さんの記事「ジャズ喫茶の文化論」を読んで思わず笑ってしまいました。いかにも菊地さんらしい諧謔味に富んだジャズ喫茶論なのですね。

 なにしろタイトルが刺激的、「なぜ、ジャズ喫茶はコーヒーがまずいのか?」~あるいは、修行場のパワハラモラハラ~というのですから、これはジャズファンはもちろん、ジャズ喫茶店主だって思わず手にとって読まざるを得ません。

 

 しかしよく読んでみると、菊地さんが語るコーヒーもフードもみんなまずかった「イーストコースト」という店の話は、今から半世紀も昔のこと。また、「80年代においてもとにかく一貫していたのはコーヒーがまずかった」とも発言していらっしゃるが、これとてもう40年も昔の話なのですね。

 それももっともで、「90年代にプレイヤーとして「新宿ピットイン」とかに出演するようになってからは、ジャズ喫茶にはあまり行かなくなったのですよね」とご自身語っているように、菊地さんのジャズ喫茶体験は30年前で途切れている。つまり菊地さんは現在のジャズ喫茶の実態をあまりご存じないようなんです。

 

 しかしこの間、ジャズ、そしてジャズファンの実態は大きく変化し、なかんずく2010年以降ジャズを取り巻く環境はまさに様変わりと言えるほど変容しているのですね。この大きな変化を無視した「ジャズ喫茶論」はあり得ません。そこでこの「30年」の空隙を、1967年開業以来ず~っとジャズ喫茶の店頭に立ってきた不肖私めが、若干のつたない補足情報をご提供いたしたいと思います。

 

 まずタイトルの「なぜ、ジャズ喫茶はコーヒーがまずいのか?」という設問の菊地さんによる回答らしきものは、「もしコーヒーに力を入れだしたらレコードがおろそかになるかもしれないと、(80年代の)客は全員納得していましたね」という発言に要約されるでしょう。

 確かに大昔はそうした「空気」が無かったとは言えないのですが、それとて1961年に開店した伝説の名店、新宿「DIG」(現在は「DUG」)のオーナー、中平穂積さんの「(50年代)当時のジャズ喫茶はコーヒーがまずいので、何とかおいしいコーヒーを出そうと努力した」という発言をご存じなら、若干の留保が付くのではないでしょうか。

 私も「DIG」には足しげく通いましたが、コーヒーがまずいと思ったことはありません。付け加えれば、60年代当時「DIG」のレコード・コレクションは数千枚を数える有数のレコード保持数を誇っていました。

 また、70年代のコアなジャズファンならどなたもご存じ、今は無き渋谷の名ジャズ喫茶「メアリー・ジェーン」などは、わざわざこの店のコーヒーを楽しむために訪れる常連客が大勢いたものです。

 つまり当時はふつうの喫茶店だってまずいコーヒーを平気で出しているところがあったように、まずいコーヒーを出すジャズ喫茶だって当然あったでしょうが、それは全然一般化できるような話じゃなかったんですよ(当たり前ですよね)。

 そして1980年ドトールコーヒーの創業や、1996年のスターバックス日本店の登場に伴い、比較的安価ながら良質のコーヒーが提供されるようになってからは、安直な「喫茶店」は自然と淘汰され、その流れの中で「まずいコーヒーを出すジャズ喫茶」もまた廃業せざるを得なくなったことは、「現場」に立っていた私は実感として身に染みております。一時期の「ジャズ喫茶衰退」の遠因はここにもあったのです。

 

 もう一つのパワーワード「修行場のパワハラモラハラ」というのも、まったく無根拠とは言えませんが、かなり戯画化されていますね。これは菊地さんも言及しているマイク・モラスキーさんの影響もあるのかもしれません。

 まずは菊地さんの発言を追ってみましょう。「ジャズ喫茶にあって他所にないものとして、パワハラモラハラがあります。要するに、勉強の場としてのジャズ喫茶には「詳しい人に教えてもらう」というパワハラモラハラが構造として組み込まれている。」ご本人も「ある程度偽悪的に言っていますが」と注釈をつけていますが、まさに菊地さんらしい諧謔ですよね。

 ふつう人は他人に何かを教えてもらっても、それをパワハラだとかモラハラとは感じないんじゃないでしょうか。少なくとも私はそうです。むしろ知らないことを教えてもらって得したと思いますね。

 ここでまず押さえておきたいのは、日本にジャズ文化が定着したのは1961年のアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ来日に端を発するジャズ喫茶ブームです。もちろんそれ以前からジャズ喫茶はありましたが、彼らの来日公演をきっかけとして前述の中平穂積さんによる「DIG」はじめ、全国に多くのジャズ喫茶が誕生しそこを拠点にジャズファンが増えて行ったのです。

 しかし60年代当時、私を含めまったく「ジャズの文脈」を知らなかった音楽ファンとっては、「ジャズ」は真剣に「拝聴」しなければ到底理解できなかったですね。ですから「お前はジャズがわかってない」といった議論の末のパワハラモラハラがありえたのです。

 しかし早くも70年代頃から日本のポップスでもバックがジャズ・ミュージシャンだったりするケースが登場し、そうした状況で育った若い音楽ファンは無意識のうちに「ジャズ的サウンド」に慣れ親しんでいるので、もはや「わかる~わからない」といったアタマでっかちなレベルでジャズを聴いてはいないのですよ。

 

たとえば「いーぐる」でもパソコン操作をするお客様が増えだしたのですが、この方々が突如キーボードの手を休め、かかっているアルバム・ジャケットをスマホで撮影していくような光景がいまや日常化しているのです。つまり、ある意味BGM的にジャズを聴いていても、演奏がツボに嵌るとちゃんとアルバムをチェックしているんですね。つまりジャズファンの聴取リテラシーが昔とは比較にならないぐらい上がっているのです。

ですから前出のスターバックスについて、店内BGMにコルトレーンが使われたことを菊地さんは「こうしてジャズは最強のBGMとなり、それに伴いジャズ喫茶という文化は形骸化して霧散していったんです。」と断じておられるんですが、これはまさに「現場」を知らない方の思い込みなのですね。

いやそれはいささか失礼な憶測で、菊地さんは「微弱なハラスメントまで完全に排除したら、世の中の面白みはだいぶ減ってしまうんじゃないか。」と万事ご承知の上でのレトリックなのでしょう。

 

 ともあれ、こうしたジャズ喫茶の現況を知れば、「ジャズ喫茶が修行場だ」とか「パワハラモラハラ」なんて言う話は、まったく過去の遺物となっているのですよ。菊地さんの30年前の体験はそれなりにリアルだったんでしょうが、21世紀も四分の一を過ぎようとする今となっては、まさに「古き良き時代」の昔語りというわけです。

 してみれば本誌の表紙の「ジャズ喫茶の文化論」という表記も、むしろ「昭和レトロ、懐かしのジャズ喫茶論」とした方が実態に合っていたのかもしれません(笑)。

 

 最後に付け足しておけば、私は取材の場として店をご提供いたしましたが、その時チリビーンズを作っていたので、話の内容は出来上がった雑誌が送られてくるまでまったく知りませんでした(聞いていたら、写真撮影はご遠慮したんですけど…)。