8月16日(土)

ちょっとした思いつきで開催した「納涼持込盤大会」、思いがけず楽しいイヴェントとなった。各自がアルバムを持ち寄る企画は、以前から年末にその年のベスト盤大会を行なっていたが、今回のようなゆるい縛りの場合、講演者の個性がより明瞭に現れるのである。
私としては「納涼」なのだから皆さん涼しげなサウンドをご持参くださると思っていたが、これが大誤算。半分以上がガマン大会的暑苦しいサウンドのオンパレード。ジャズファンって、ヒネくれた人たちですねえ。
たとえば、高野雲ちゃんはデヴィッド・マレイがジェームス・ブラッド・ウルマーとぐちょぐちょの熱演を繰り広げる『Children』(Black Saint)から《David / Mingus》。その言い訳が、「暑さをしのぐにはより熱い音を」というのだから笑ってしまう。しかしこのコメント、あながち的外れでもなく、暑いときに激辛カレーを食べると身体がシャンとするような効果がある。最近『カレーの本』を企画編集した雲ちゃんらしい発想である。
極めつけは八田真行さんのイリノイ・ジャケー『The Soul Explosion』の《The Soul Explosion》で、まあ暑苦しいサウンドもここに極まれり的演奏が延々続くと、炎天下で大量にアルコールを摂取した時のように全身がダラ〜っと弛緩してきて、これはこれで心地よいのだった。
可愛かったのは、講演最年少記録を塗り替えた雲ちゃんのお子さんの発表するパット・メセニー『Secret Story』(Geffen)《Facing West》 で、私が「この演奏、どんな感じがすると思う?」って聞いたら「どこかに冒険に行く時みたいなカンジ」と実に的確な返答をするのだ。ジャズファンの英才教育は着実に成果を挙げている。
私を含め総勢15名による発表は無事終了し、後は和やかな打ち上げ。毎度のことながら講演の内容が良いと宴会も盛り上がり、最近の掲示板上を賑わすさまざまな話題を肴にして談笑の輪が広がる。再三言ってきたことだが、こうしたジャズファン同士の直接の対話は物凄く重要で、普段からこうした交流があれば、一部の「井の中の蛙」的思い込みは発生しようがないのだ。