6月13日(土曜日)

プランクトンさん主催による「カニサレスの魅力に迫る!!」と銘打たれた彼の来日記念公演記念トーク・ショー、たいへん失礼な言い方とは承知しつつ「予想外の収穫」であった。いうまでも無く「予想外」とは「私にとって」ということ、つまりカニサレスという音楽家についてまったく知識がない人間にとって、ということである。

「収穫」の第一はなんと言ってもカニサレスの「凄さ」を実感したこと。これは、映像の力が大きかった。ベルリンフィルと共演した彼の演奏映像は、「ジャンル」に対する知識・壁をいともたやすく乗り越え、圧倒的な力で私に迫ってきたのだ。

わかりやすく言えば「テクニック」なんだけど、いわゆる「フュージョン・ギター」の「味気なさ」の対極にある「音楽的表現と密接に結び付いた演奏技術」ということになろうかと思う。まあ、半分戯言ですが、彼の演奏を観らたいがいの「ジャズ・ギタリスト」のテクニックは若干かすみ気味。

そのことを解説者の音楽評論家、林田直樹さんに言ったら、「いや、ジャズマンは即興でやってるんですから、譜面で練習した人と比べるのは不公平です」と逆に慰められてしまいました。それにしても林田さんの解説は素晴らしかった。カニサレスの特徴をリズムの取り方など具体例を挙げて説明していただき、そっち方面にまったく不案内な私にもわかりやすい。

また嬉しいことに、その「演奏例」をギタリスト鈴木大介さんが実演してくれ、これはありがたかった。この方のテクニックもただものではない。解説ということで言えば、林田さんの語り口はわかりやすい同時に具体的なので、私なども自分がジャズの解説するときの参考になる。ポイントは「聴き比べ」で、この手法は「スタンダード聴き比べ」という風土がもともとある私たちジャズファンにとっては、たいへん馴染み深いものなのだ。

当然アフターも盛り上がり、林田さんにぜひクラシックの講演を「いーぐる」でもお願いしたいとお願いしたところ、快く引き受けてくださった。秋ごろには林田さんに第1回目のクラシック聴き比べ講演を実現させたいと思っております。林田さん、ぜひよろしく!

最後にまったく個人的な感想だけど、今更ながら「クラシック恐るべし」の思いを深くした。音に聞くベルリンフィルの凄み、映像で見るとその説得力たるや恐るべきもので、「こりゃ、なまなかなことではジャズはクラシックの厚い壁を乗り越えられないな」と実感した次第。そういう意味では、即興に特化したパーカーの作戦は、とりあえず大成功だったと改めて認識。

ご批判はあろうかと思う感想だけれど、安易に「ジャズのサウンド化傾向」を称揚される方々は、一度じっくりと伝統と文化の厚みに支えられたクラシック・サウンドの「手間・暇・金」のかけ加減を実感していただいたほうが良いように思った次第。


6月14日(日曜日)

西葛西のイオンモールで「ジャズの巨人」の宣伝イヴェントに出る。お相手は人気D.J.大塚広子さんで、彼女と掛け合いで2回の講演をこなす。選曲は大塚さんにお願いしたが、さすがD.J.だけあって「ジャズの巨人」マイルス特集からの選りすぐりの選曲。かける順番も実に適切で、「音だけで」お客様がたの関心を惹き付けてくれるので、これはやりやすい。

前列に陣取ったおば様おじ様方がうなずくたびに、「たいへんだけどやってよかった」の思いを深くする。まだ陽も高いうちに終了、当然一杯飲もうということになり「午後4時から営業」の看板に引き寄せられ村井さん、池上さんと「軽く一杯のつもり」がなんと夜の10時まで延々6時間も飲み続け。

安い居酒屋とタカをくくった飲み代も、開けたワインの本数も尋常ではなく、それなりに。レシートに打ち込まれた金額を眺めた村井さん、太っ腹にも「これは小学館で」とありがたいご託宣。村井さん、小学館さん、ごちそうさまでした!