9月29日(土)

益子さんの「21世紀ジャズ・シリーズ」、もう3回目だがリズムにポイントを絞った今回の講演、たいへんわかりやすかった。具体的な影響関係の論証はさておき、出てきた音の類似性に焦点を当ててみれば、明らかに共通の感覚が聴き取れる。
従来はそれがジャズ内部の共通性で、例えばトニーの先生はアラン・ドウソンだ、みたいなことですんでいたけど、いまや黒人がふだん聴く音楽が白人テクノだったりするわけで、ジャズしか聴いていないとどうにも脈絡がつかめないミュージシャンが出てくる。
そのあたりの問題点を、ロック、ハウス→デトロイト・テクノに訂正、ドラムン・ベースなどジャズ以外の音源を参照しつつ丁寧に益子さんは説明してくれた。
今回の講演はリズムの特徴がわかりやすい演奏を選んだためか、昔のジャズに比べてスポンタニティに欠けているんじゃないかという意見もあったが、これはそういうトラックを選んだということもあるかと思うが、即興演奏の自発性自体が変容しているようにも思える。
昔のジャズ演奏のグルーヴ感みたいなものを下敷きにした聴き方をすればそう聴こえてしまうのかもしれないが、ジム・ブラックやジェラルド・クリーヴァー、そしてヴィジェイ・アイヤーたちの音楽におけるミュージシャン相互の関係は、かつての「インタープレイ」みたいなものとは違っている。とはいえ、そこに新たな相互啓発作用があるのも事実で、しかしそれはかなり注意深く彼らの感覚に寄り添うようにして聴かないとわかりにくい性質のものであることも確かだ。
エラそうに言ってるけど、私自身ジム・ブラックやジェラルド・クリーヴァーの素晴らしさを実感したのはライヴに接してからだった。