3月19日(水)

村井さん、須藤さんたちと、東京キネマ倶楽部菊地成孔DUB SEXTETを見に行く。鶯谷である。どんな場所かというと、おそらくは元キャバレーかダンスホールであったところを再利用しているのだろう。まるで、昭和30年代の日活映画を見ているような気分にさせられる。吹き抜けのフロアーを囲むようにして2階席3階席が設けられ、座席も豪華。

ワールドとかいう服飾メーカーのジャケットを身につけた菊池さんたちは実にカッコいい。まず外見から、というのは、M.J.Q.ジャズ・メッセンジャーズ、そしてマイルスらが実践してきたことで、「演奏がよければかっこうなんかどうでもいいだろう」という一部のミュージシャンたちに対する暗黙の批判になっている。

菊地さんの幅広い交友関係を示すように、客席も豪華、というかやたら濃い。平岡正明さんの脇に伝説のプロモーター、庚芳夫さんがいる。お二方ともこの場所に似合いすぎだ。終演後ご挨拶させていただいたが、この方たちのような濃厚な存在感を漂わせた人にはこのところトンとお目にかかれない。時代のせいか。

平岡さんとは例のごとく格闘技の話で、合気道なんかに浮気せず空手一本でお行きなさいと親切なご忠告。何しろあの大山倍達先生のご薫陶を受けた平岡さんのお話である。聞かずばなるまい。菊地さんにも、ご挨拶。先日いただいたシャンパンのお礼を言う。どこにも見かけないブランドですねと言うと、わざわざ取り寄せたというではありませんか、ありがたいことです。

以下付録の「格闘技通信2」
柔道、レスリングの合同練習はそれなりに理解できるけれど、剣道はちょっとオオゲサではないか、という皆さん(そんなことに関心のある人いないか)のために、ちょっと補足を。

当時の母校は、開祖の思想「実学」を実践していたのかどうか、「実際に役に立つ」ことをモットーにしていた。だから、われわれ武術系運動部員(とはいってもまだ高校生、今だったら父兄の猛反対必至ですな)を、平気でガードマン代わりに使うのですね。

「日吉祭」の後夜祭という本来なら楽しいはずの学園祭の警護のため、素手なら最強と目された空手部員以下、武器を持っていなければ役に立つまいと思われる弓道部員まで総動員させられ、当時まだ林や藪が生い茂る校舎周辺で不逞の輩のイタズラ(当時は実際に多発した)を鎮圧撃退する役目をおおせつかるのだ。

なかなか合理的(これも母校のモットー)だと思ったのは、得物持たせたらモンダイになる弓道部員は一番安全な東横線日吉駅前。武器ナシでも一応の戦闘力を発揮できると思われたのか、剣道部員は駅前からの並木道。そして最悪の危険地帯、マムシ谷は空手部なのだ。でも、こういう「合理性」って、明らかに実戦を想定してるみたいで怖いよね。

われら柔道部はというと、最悪ではないにしろ危険度2番目のグラウンド周辺の林の闇の中で、皆さん女子高生らと楽しくキャンプファイアーを囲んでフォークダンスなどに興じる最中、2人一組でパトロール

この話を聞いたとき、監督に「怖いから何か武器持たせてください」と言ったら「お前ら何のため柔道やってんだ、素手で戦うんだよ、素手で」と言下に却下。そうは言っても当時は飛び出しナイフやら短刀持ってるワルはいくらでもいて、そんなのが来たらどうすんだよ、と思ったが口には出来ない。

そんな事情もあって、せめて木刀、バットのたぐいの攻撃はかわせるように、剣道部員からもご指導をいただこうと、こういうわけなのだった。それにしても、刺されたらイヤだから胸まできつくサラシを巻いていると、母親がやくざみたいでイヤねと言う。イヤ夜は冷えるからとか何とかごまかして「出撃」したけれど、まあ、今では考えられませんな。昔は野蛮でした。