8月22日(土)

ジャズファンのベニー・グッドマンに対する扱いは微妙だ。もちろん彼の功績、存在は認めつつも、ではグッドマンの熱狂的ファンを身の回りに何人数えることができるだろう。たとえばブルーノートコレクター、フュージョンファン、ECMマニアと言った人たちに混ざり、数は少ないかもしれないけれどサッチモ愛好家、エリントン研究者などは確実に存在する。然るにグッドマンは、、、というわけだ(私が知っているのは、神田の中古レコード店「トニー」のご主人ぐらい)。
その謎に迫るべく、今回の小針さんのグッドマン特集が開かれたわけだが、かなり事情がはっきりしたと思う。つまり、大恐慌の29年から30年代にかけてのアメリカ社会、文化状況の変化をうまく受けての「スイング・ブーム」が、グッドマン人気を後押したというのだ。なるほど、と思った。確かに、小針さん言うところの洗練されたグッドマンの「流線型サウンド」は、不況を抜けアメリカンドリームを目指す時代の空気にうまくフィットしている。そして時代の風を受けた音楽は時代が変われば受け止められ方も変わるだろう。
それにしてもの「過小評価」だが、それにはグッドマンの人柄も関係しているという。音楽以外は「上の空」のグッドマンは、「対人関係」がうまくない。そのあたりも、とりわけ日本の評論家筋からウケが悪かった一因ではないかと言うのだ。そうなるとこれは、不運と言うしかない。
しかし、そうしたことも含め、今回の小針さんの時代を追ったていねいな音源紹介は、グッドマン再評価に大きく貢献したと思う。最後の質疑応答における、グッドマンとエリントン、そしてフレッチャー・ヘンダーソンの関係に対する質問など、今後の研究課題もいくつか明らかになり、非常に実りの多いイヴェントであった。
打ち上げの席もジャズ論議で盛り上がり、小針さんのスイングの定義「メンバー全員の気持ちの一致がスイングを生む」に対し、それでは「ドライヴ」「グルーヴ」とどこが違うのか、あるいはパーカーの演奏もスイングと言えるのか、など、ジャズマニア同士ならではの熱い論戦が続行された。そのあたりも含め、今後の小針さんのジャズ論の展開が楽しみだ。