2月6日

ビートルズビートルズビートルズ! 怒涛の40曲固め聴きはアッという間に時間が過ぎ、まったく飽きることが無い。いまさらながら彼らの凄さを実感した。というのも僕ら団塊世代ビートルズの登場から解散まで完全に同時代的体験をしているが、今と違い、これほど濃密な音楽情報は得ることが出来なかった。平均的洋楽ファンは初期ビートルズをそれほどキチンと聴いてはいなかったのだ。
それにしても、これだけの曲の中につまらないものがほとんど無いのは驚異的なことだと思う。しかも阿部ちゃんの強烈な美意識は、時代を1964年までに限定している。そこには《イエスタディ》も『サージャント・ペッパーズ』も登場しないのである!
今回リマスタリング盤として発売されたビートルズ・ボックスセット、モノラル・ヴァージョンを聴く阿部等さんのいーぐる連続講演は、余分な解説を省いてひたすらビートルズを聴くことに集中した2時間だったが、こうした構成は実に正解であった。音楽がすべてを語っている。いや、語りつくしている。
それを証明するかのように、39名に上る参加者のうち、ほとんどのお客様が最後までビートルズの世界にはまり込んでいた。400回を越すいーぐる連続講演でも、終了してもお客様が席を立とうとしない今回のような状況は初めてだ。私も事前に用意していた質問事項、なぜ64年までなのか? というギモンに対し、それを予想していたかのような阿部ちゃんの「私はジョンの声が聴きたかった、だから、ジョンが前面に出ている曲に絞って選曲した」という、実に説得力のある回答で宙吊りとなり、ただただ余韻に浸るお客様方の感想をお聞かせいただくという役回り。
私自身、ビートルズというと前出のポールの曲や、アルバムとしての完成度の高さを喧伝された『サージャント・ペッパーズ』の印象が強く、初期の荒々しいロック衝動を剥き出しにしたビートルズを忘れていた。アフターアワーズの楽しい雑談の中で気が付いたのだが、阿部ちゃんのように、曲の構成よりジョンの声や演奏の迫力に関心が向く傾向は、どうやらジャズファンに共通しているようなのだ。言ってみれば、ビバップを聴く感覚でビートルズを聴いているのである。こうした傾向は確かに私にもある。
楽しい中にも発見のある今回の講演は、音楽ファンとしての自分自身の音楽の聴き方に、「ジョンの声」という思わぬ方向から光が当てられた形となった。ハッキリ言って、事前の予想をはるかに上回る、いーぐる連続講演史上に残る素晴らしいイヴェントでありました。阿部ちゃん、ありがとう!