5月15日(土)

連休を挟み、しばらくお休みしていた『いーぐる連続講演』連休明け第1弾は林さんの『エリントンを聴け!その4』。私がジャズを聴き始めた1960年代、エリントンは敬して遠ざけられるミュージシャンの代表だった。誰しもが彼に敬意を払いつつも、一部の熱狂的ファンを除いて、エリントンの音楽について語られることは稀だった様に記憶している。
理由は二つほど考えられ、まず、今でも続いている一般ジャズファンのコンボジャズ優先思考、そして古い音楽というイメージ。こうした理由から、ジャズ喫茶でかかるのは小編成の『マネー・ジャングル』とオーケストラものではせいぜいが『極東組曲』『ポピュラー・エリントン』ぐらいのもの。
そんな具合だから、私自身エリントンの凄さに開眼したのはかなり遅かったし、今でもエリントンの魅力といっても、知っているのはその全貌というよりかなりつまみ食い的な聴き方であることは否めない。こうした状況で開かれたエリントンの連続特集、実にありがたい。今まで3回の講演で、彼の知られざる側面についてずいぶん知識を得たし、今回は一番馴染みのない「組曲特集」だ。
特集テーマとは特に関係ない、《ロッキン・イン・リズム》で開幕した講演は、最初の数曲こそ、少しばかり大部の「組曲」というスタイルに耳のピントを合わせるに時間がかかったとはいえ、1950年代から時代を追ったプログラムが進むにつれ、次第にエリントン・ミュージックの醸し出す心地よい世界に浸りきることが出来た。とりわけ、60年代以降の『ラテン・アメリカン組曲』やら、70年代以降の『アフロ・ユーラシア組曲』などは、恥ずかしながら存在すら知らなかったが、これがいいのだ。
最後の質疑応答でも、これらの組曲がなぜあまり知られていないのかという質問が出たが、要するに油井先生の名著『ジャズの歴史物語』(アルテス・パブリッシング刊)以降、この手の大物たちの音楽について書かれたものが少ないことが理由の一つに上げられそうだ。
それにしても、今回はビリー・ストレイホーンとエリントンの関係や、両者の作風の違いなど、私などあまりよく知らないことがていねいに説明され、実に得るところの多い講演であった。『エリントンを聴け!その5』が期待されるところだが、どうやら今年中にこの企画は実現しそう。楽しみである。