6月12日(土)

今でも一応入会している日本ポピュラー音楽学界の例会によく参加していた頃、会員の発表が大きく分けて二つの方向に分かれていることに気がついた。音楽学的な研究発表と、音楽社会学的な方向だ。個人的には音楽学的な興味の方が強かったので、どちらかというと社会学系の講演には無関心だったが、それでもときどき、へえーと思わせる研究発表があって目が離せない。「ゴスロリ」などというコトバを知ったのも、この学会でだった。

去る6月5日(土)に行われた関口義人さんのいーぐる連続講演も、どちらかというと音楽社会学的な切り口の発表だったと思う。特に最近の音楽受容状況の激しい変容は、音楽産業の業態を著しく変え、また、音楽自体にも影響を及ぼしているという。そうした事態は一応知識としては知っているけれど、具体的な実態についてはまったくわからない。だからパヒュームに始まる関口さんの『21世紀音楽』は、まさに時宜を得た講演だったと思う。

ロック、ニューフォーク / サイケデリック、ジャズ、ヒッピホップと四つのコーナーに分け、私など普段あまり聴いたことのないさまざまな楽曲を紹介し、それぞれを現在の音楽状況の中に位置づけるという関口さんの講演は、私などにとっては実に便利であった。特に日本のヒップホップなどはまあ聴いたことがないので、へえー、こういうものなのか、と認識を新たにした。

その新たにした「認識」も、たとえば日本のヒップホップの「音」の面と、彼らのおかれた状況や、その現代的意味といった「音楽社会学的」側面に分かれる。つまり先ほどの「音楽学」と「社会学」の二つだ。本当のことを言えば、その両面の考察がバランスよく展開されれば言うことなしだが、いかんせん時間の問題もあって、それは無理と言うもの。

総じて「詰め込みすぎ」の感もあり、これはぜひ関口さんにはシリーズで講演をやっていただき、たとえば今回の講演をその「目次」というか、総論編として、各回テーマをもう少し絞り込んで、音楽そのものと、その社会学的側面について、バランスよく解説していただきたいと思った。

とは言え、参加者の関心の高さは相当なもので、講演後の質疑応答もいつも以上に発言者が多く、また、そのレベルも高かった様に思う。すべて興味深かったが、中でも「音と音楽はどう違うのか?」という実に根源的というか哲学的な質問には、思わず自分だったらどう答えられるのだろうと自問自答してしまった。

関口さんのテーマは現代の音楽シーンであり、それは私が個人的に参加しているジャズのサイト「com-post」のテーマとも通底しており、なにかしら連携していければ面白いのではないかと考えているところだ。