10月9日(土)

正直に言って、私は復帰後(80年代以降)のマイルスをそれほど高く買っていない。しかしそれはそれとして、今日の中山さんの講演は興味深いものだった。

まず、私たちジャズ関係者はヒップホップのことをよく知らないという事実だ。そしてまた、ヒップホップに詳しい方々は別にジャズに興味を持ってはいない。だれかがその断絶の架け橋をしなければいけないし、その結果としてマイルスの足跡が見直される可能性、またジャズという音楽の行方を考える上でのヒントが得られるかもしれないという中山さんのお話は、非常に説得力があった。それにしても、パブリック・エネミーはコッコいい。

ちょっと言いにくいことだが、私にとっては、晩年のマイルスの音楽はそれなりに魅力があるとは言え、それ以上に今回の中山さんの著作『マイルス・デイヴィス奇跡のラスト・イヤーズ』(小学館新書)の方が面白かった。マイルスという人間の凄さがさまざまな角度から浮き彫りになっている。個人的評価と断っての上だが、音より文章の方が勝っている。つまり、読み物としての深みコクがある。例えば、マイルスが入院先で同じく入院中のカポーティと話し込んでいたなどという記述に、想像力が喚起されるのだ。

予告だが、11月13日(土)午後4時から、中山さんによる好例の『大音量でロックを聴く会』が『いーぐる』で催される。これは講談社文庫から出版される『ジョン・レノンから始まるロック名盤』の発刊記念イヴェントでもある。それにしても、中山さんの旺盛な執筆意欲には驚かされますね。私も見習わなければ・・・