4月2日(土)

本来、今日は好例のいーぐる花見大会の予定だったが、地震原発事件でとうていそういう気分にはなれず、また、実際に桜も咲いていない(気候も異常だ)。そこで急遽阿部さんがソニー・クラークの講演をやってくれることになったのだが、不十分な事前の告知にもかかわらず、思いのほか大勢の熱心なお客様においでいただき、改めてクラークの人気の高さと、阿部ちゃんの「選曲センス」に対するお客様方の信頼の篤さを実感した。

今回の講演は、夭折したソニー・クラークの演奏の前半分をほぼ時代を追って聴くという、何のけれんもない構成だったが、そのことがかえってクラークの個性、魅力を際立たせると同時に、改めて「音楽講演」のあり方を考えさせてくれた。

まず、ソニー・クラークに対する一般ジャズファンのイメージは、有名な「足ジャケ」の『クール・ストラッティン』(Blue Note)に代表される、黒々ファンキー路線だろう。確かにブルーノートのクラークは作曲センスも含め、黒い。

しかし、クラークの経歴を辿ると、西海岸で活動した時期もあり、また、いわゆるハードバッパーとは若干立ち位置の違うバディ・デフランコのサイドマンを務めていたこともある。

そうした演奏も含めて聴くと、クラークは思いのほか多様な性格のミュージシャンと共演していることが実感され、そのどの場面でも、的確に自分の役割を果たしていることがわかる。そして同時に、どんなアルバムでも、一聴してクラークとわかる個性的なタッチがあるのだ。

こうしたジャズマンに対する基本的な理解は、とにかく「音を聴く」ことでしか実感できない。期せずして、前述した「時系列に沿ったけれんの無い構成」が、音楽講演のあり方の基本を照らし出してくれたのである。

もちろん、講演のスタイルは多様であったほうがいい。そのなかで、一人のミュージシャンの足跡を辿る行き方の有効性を、今回の講演はいまさらながら実証してくれた。クラーク後半生の演奏を取り上げる第2回が楽しみだ。阿部ちゃん、ありがとうございます!