6月18日(土)

パーカー・フリークとして名高い鈴木よういちさんの今回の講演は「カンザス・シティ・ジャズとチャーリー・パーカー」。お得意のテーマだけに、講演の流れは極めてスムース。とりわけ「付録」に付けられた「カンザス・シティ・ジャズ史外観図」は実に見事な労作。ジャズ史研究はこうした地道な努力の積み重ねによって成り立っていることを改めて認識させられた。

選曲の流れは、アメリカ中西部に位置するカンザス・シティの特殊な状況を概観しつつ、それがパーカーの音楽にどのような影響を与えたのか、あるいは与えなかったのかをていねいに追っていくもの。

その過程で、ベーシー・バンドをはじめとするカンザス・シティのさまざまなバンドの音楽的変遷が実に良くわかり、これは面白かった。また、鈴木さんの結論として、パーカーはレスター・ヤングをはじめとする、少年期の彼を取り巻く音楽的環境から一定の影響を受けつつも、パーカー自身の音楽は天才特有の一種孤立したものでは、という推論も納得のいくものだった。

しいて問題点を探すとすると、いわゆる「カンザス・シティ・ジャズ」なるのもの音楽的特徴をもう少しわかりやすく解説してもよかったのかなと思えた。と言うのも、ある程度ジャズ史に通じたファンなら言わずもがななことも、一般的なジャズファンにおいては、それほど自明ではない。

音楽とそれを楽しむファンの中間に位置して、両者を繋ぐ立場であるべきこうした講演の解説者は、その辺りの事情も勘案し、よりわかりやすい説明が求められているのだ。次回の講演に期待したい。