8月27日(土)

まず最初にお知らせを! 長らく山下さんにお世話になっていた『いーぐるホームページ』、今日から下記のアドレスに引っ越しました。『掲示板』も従来同様お使い願えます。

http://www.jazz-eagle.com/
http://jazz-eagle.com/でもOKです。

ここから本題です。このところ『いーぐる連続講演』はヒップホップづいていますが、これにはわけがあります。今年初めから5回に渡って行われた中山康樹さんによる『ジャズ・ヒップホップ学習会』、当然私は全部聴き、最終回は「生徒代表」として中山さんと対談もいたしました。学習会の趣旨は、要約すれば「ジャズの優れた部分が現在ではヒップホップに受け継がれている」あるいは「ジャズとヒップホップは本質的部分で繋がっている」とでもなるのでしょうか。この私の理解自体も、あるいは若干ズレている可能性もあります。

それを前提とした上で「学習会」の個人的総括をすると、「わかるところもあり、わからないところもある」という、はなはだアイマイ模糊とした感想でした。わかるところは、「従来のジャズ史に(ヒップホップという)新たな補助線を引くことによって、いままで無関係と思われていたもの同士の、思いのほかの近接関係が見えてくる」という発想で、こういう形での歴史の見直しは充分ありうると思います。

他方、わからないのは、5回の「学習会」では、それほど密接なジャズとヒップホップの隣接関係は、少なくとも私の耳では感じ取れなかったというところです。もっともこの部分は、私自身ヒップホップという音楽ジャンルに無知なため、聴きどころを掴み損ねている可能性も充分にありうるでしょう。

そこで、「復習」という意味で7月に鷲巣功さんに『ヒップホップ前夜』、そして今日、中山さん主催による「学習会」にもゲストとして出ていただいた原雅明さんと、その時お客様でおいでいただいたD.J.アズーロさんにお越しいただき、鷲巣さんがご紹介してくれた以降のヒップホップ・シーンを、プロデューサーに的を絞って聴く会が行われたというわけなのです。

結論から言うと、やはりやってよかった。その理由は、まず、「ヒップホップってカッコいいじゃない!」という、実に単純明快な感想に要約できるでしょう。もちろん理由はそれだけではありません。まあ、ヒップホップの表面をかすったに過ぎない私の経験でも、それなりの「ジャズ・ヒップホップ問題」に対する回答が形を成したことです。それは、「ジャズとヒップホップは、ともにブラックミュージックであるがゆえの近接性はあるとしても、やはり別の美意識で作られているのではないか」という、しごく常識的な結論です。

言うまでもなくこれは中山さんの主張と相容れませんが、まあ、こういう見方もあるということですね。それはさておき、「やってよかった」の中身をもう少しご説明いたしましょう。まず、最初に言ったように、音楽として面白くカッコいいということがリアルな手応えとして伝わってきたこと。これは原さん、アズーロさんというヒップホップを熟知したお二方が、それぞれ腕によりをかけて選曲された結果だと思います。

お二方のお話では「ヒップホップをよくわかっていないこ後藤さんにこの音楽の聴きどころを説明する」という私のお願いを念頭に入れつつも、「自分たちがいーぐるの音響装置で聴いてみたい」という、音楽ファンとして実にホンネの部分もあったそうです。これが良かったのですね。つまりお二方が聴いてみたい音は、やっぱり私にとっても刺激的、かつ魅力的だったということです。

二つ目は、鷲巣さんのときも言ったことですが、5回の「学習会」ではどうにも焦点を結びにくかったこの音楽ジャンルの輪郭が、より明確に体感できたことです。これが先ほどの「ジャズとは違う」という感想をより強いものにもしたのですが・・・そして三つ目は、鷲巣さんがあえて「前夜」としたのは、鷲巣さんはある時期以降ヒップホップに興味を失ったからだと言っていたことに関連します。

実際私は鷲巣さんの選曲を大いに楽しんだので、その方が「興味を失った」時期に相当するであろう今日の原さんとアズーロさんの出される音に対し、頭の片隅で一抹の危惧(鷲巣さんの言うとおりツマラないんじゃないだろうかという)を抱いていたことを正直に言っておくべきでしょう。しかしこの予想は見事に覆されました。鷲巣さんの選曲とは確かに時代の変化を反映したテイストの違いはありつつも、まだまだヒップホップは元気があり、刺激的でカッコ良かったのです。

とは言え、これは鷲巣さんのお考えとは(そしてまた原さん、アズーロさんのお考えとも)違うのかもしれませんが、原さんアズーロさんの選曲においても、現代に近づくとともに、進歩とも、あるいは「煮詰まり」とも思える感触が現れてくることは否めませんでした。面白かったのは、そうした状況を体現するようなマッドリブの2010年の音は、確かに「ジャズ的」とも言い得るものでした。だけど、会場のお客様が最後にリクエストした、確か80年代の(後で確認します)音のほうが、私には気持ちよく聴けたのも事実です。

あと、今まで同じことの繰り返しで飽きると思っていたラップが、思いの他気持ちよく聴けたのも新しい発見でした。やはりこれは選曲の腕。まあ、このあたりは「選曲命」のD.J.の方がおやりになるのだから当然と言えば当然なのですが・・・もう一点、やはりホンモノのヒップホップを聴くと、ハンコックのロックイット・バンドのサウンドなどは、確かにポピュラリティということでは洗練されているのでしょうが、私などには中途半端に聴こえてしまうのです。やはりハンコックはジャズをやっている時の方が良い。

最後に、とても嬉しかったのは、原さん、アズーロさん共に、聴きながら「コレは凄い」「今まで聴いていた音とは違う」と言っていーぐるのサウンドをホメてくれたことでした。若干手前ミソになりますが、打ち上げの席でも、若手D.J.そしてヒップホップ・ファンの皆さんが「クラブの音ではわからないことが今回わかった」と言ってくれたことです。

ともあれ、違う音楽ジャンルのファン同士が、音楽を媒介として楽しく語り合うことが出来、ほんとうにやってよかった。原さん、アズーロさんありがとうございました!

なお、この記事では曲目等ディティールの記載がありませんが、そちらは当日参加されたいっきさんのブログに詳細かつ正確なデータがございますので、そちらをご参照ください。

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