9月15日(土)

本日の「ブルーノートBNLT999シリーズ」講演、EMIとのタイアップイヴェントと思われている方々も多いかと思うが、これは当方から持ちかけたもの。もちろんEMIさんからは多大なご支援をいただいてはいるけれど、基本的に私がやりたいからEMIさんにお願いした企画。

理由はシンプル、いいものなのに若干誤解されているフシがあるからだ。まずジャケットが問題。それだけを取り上げれば、まあ、よくあるシリーズデザインで取り立てて非難されるようなものではない。しかしECMCTIの折衷のような写真は、どう考えてもぼくらがブルーノートに抱いているイメージとは違う。

あれじゃあ、フュージョンか昔懐かしのジャズロックものかと誤解されても仕方ない。しかし中身の大半は60年代という時代背景を体現した、ゴリゴリのモロジャズ。とにかく黒い。

想像したとおり、お客様方から、「後藤さん、今度のシリーズ買いですかね?」という疑問の声がいくつも寄せられ、また複数の友人たちから「いったいどれを買えばいいの?」とのお尋ね。改めてカタログを眺めてみれば、知っている限り、かなり出来の良い内容なのに当初「未発表」だったアルバムが多数ある。

で、これは自分の勉強の意味もあるので全部聴いてみようと思い立ち、「聴きまくり大会」を企画したというわけだ。準備のためすべてのシリーズを聴いてみれば、案の定、「なんでこれをお蔵入りさせたの?」と首をかしげる秀作、好盤がかなりの比率で含まれていた。

当日はこのシリーズ成立の経緯に詳しいEMI会長、行方さんに解説をお願いしつつ、行方さんと私がそれぞれお気に入りのアルバムをご紹介するという進行。当然のことながらレーベル最深部の内幕情報を行方さんはいくつもご紹介くだされ、これはマニアならたまらない。

私はというと、これらのアルバムがいかにジャズ喫茶空間で愛聴されてきたかという観点から、「いーぐる」の選曲の定番を含むリー・モーガンデクスター・ゴードンジャッキー・マクリーングラント・グリーンドナルド・バードジミー・スミスらの名演をご紹介。

自分で言うのもなんだけど、行方さんと私の解説コンビはうまい具合に役割分担していたように思う。なんにしろ音楽はその成立のバックグラウンドを知ればより深く楽しめるということがあり、そういうことに関して行方さんほどの適役はいない。それこそこのシリーズの発掘者、マイケル・カスクーナはじめ当事者たちからじかに情報を得られる立場にいるのだ。

他方、ジャズ喫茶という現場は「聴いてなんぼ」の世界だから、とにかく「どう聴こえるか」ということに関してはそれこそ商売が懸っている。DJさん方が一生懸命アルバムを「掘る」のと同じだ。だから私たちの組み合わせは「背景と音そのもの」の両方をカバーできるというわけ。

当日の選曲リストは後日発表するが、たとえばジミー・スミスの『クール・ブルース』など、彼の代表作にしてもおかしくない出来。ルー・ドナルドソンがパーカーフレーズで吹きまくり、幻のテナー、ティナ・ブルックスが負けじと例の渋黒サウンドで応戦するところなど、ディープなブルーノートファンなら涙モノだろう。

最後に、お忙しい中こうした企画に気軽に参加してくださったEMIジャパン会長、行方均さんに、この場を借りて心から感謝の意を表したいと思います。また、後ほど私の個人的厳選シリーズ推薦盤リストも公表させていただくつもりですので、ご期待ください。