9月5日(木)

いーぐるでは時々オーディオ・イヴェントも行う。今日は、以前一部のコアなオーディオ・マニアの間で話題となったガラスCDを聴く会。正式にはクリスタル・ディスクと言うそうだが、語感からしてもいかにもいい音がしそう。ただ1枚5マンエンというお値段が・・・

さて、結論から言うと、間違いなくいい音でした。具体的に指摘すれば、まずストレス感がない。かなり音量を上げてもウルサク感じない。これはまさに生音の特徴。ライヴのドラムの音などかなりの音量だが、うまい人が叩くと決して耳障りにはならないものだ。特にシンバルの余韻など、普通のCDだと妙にシャンシャンとエッジがシッカリと聴こえ、生音を知らないとかえってそれが「迫力」と受け取られがちだが、生のシンバルのサウンドに「エッジ」などなく、自然な響きが空間全体に広がってゆく。

これは他の楽器、ウッドベースでも同じで、生楽器の音は自然に広がって「明確な音の輪郭」などというものは無い。ピアノもアタック音がきれいに伸びて、いわゆる「クリップ感」というか音が飽和した感じ、要するに歪み感が無い。また、サックスでは倍音成分がきちんと正確に再現されるせいか、音色の微妙なニュアンスが聴き取れ、音楽の表情がわかりやすい。

そのせいか、いままでちょっとばかり「アクが強い(というか、ウットウシイ)」印象があったカーティス・フラー『ブルース・エット』(Savoy)のベニー・ゴルソンのソロが、実に気持ちよく聴けたのには驚いた。再生音によってここまでミュージシャンに対する評価が変るとは・・・ 他にも、通常CD(かなりの高音質盤)と同じソースでの一対一比較をたくさん行ったが、通常CDを聴いている時は「これで充分」と思っていた音が、ガラスCDだと「その上」があるので正直驚いた。変化の方向はすべて「自然な感じ」の良さ。

オーディオの音は人によって好みの違いが大きく、またそれで良いと思っている。とは言え、やっぱりそれはマズいでしょう、という音もあるものだ。たとえば、据付台が不安定では、どんな高価な装置も実力を発揮できない。そういう時、プレーヤーなりアンプなりスピーカーなりの置き場所をシッカリしたものにすると、間違いなく音質は向上する。こうした方向の変化は「好み」とはあまり関係ないように思う。

そういう意味では「ガラスCD」の音は、装置をシッカリとした据付台に取り替えた時の音質向上に傾向が似ている。つまり「好み」とは別の次元で確実に音質が向上しているのだ。また、これを聴くまでは通常のCDに材質特有のクセがあることなど気付かなかったが、ガラスCDと同じソースで比較してみると、明らかにポリカーボネイト(プラスチック)の音がわかるようになった。これは困った。一度いい音(というか、この場合は「正しい音」、とまで言ってもいいように思うのだが・・・)を知ってしまうと、後戻りがムズカシイ。しかし5マンエンはちょっと・・・

しかし考えてみるとブルーノートのオリジナル盤など5万円台はザラにあり、仮に購入者が音質を中心に「より良いもの」を求めた結果がオリジナルとなるケースだとしたら、あながちガラスCD5万円も「法外」とは言えないのかもしれない。確かに音はいいのだから・・・

まあ、買う買わないは別にして、ガラスCDの音とポリカーボネイトの音の違いを知ることが出来たのは貴重な体験だった。こうした機会を与えてくれた(株)エム・エム・ビー、メモリーテック(株)のみなさまにこの場を借りて御礼申し上げると同時に、実にわかりやすい解説をしてくれた佐藤良平さんに心から感謝いたします。

なお、今回聴き逃された方のために第2回目の試聴会を予定しております。決まり次第ブログ等にてお知らせいたします。乞う、ご期待!