3月8日(土)

原雅明さんによるJ.ディラ特集、最高でした! まったく知らないジャンルだけど、ビートの気持ち良さ、それに乗っかっているラップ、ヴォイス、サウンド(と言っていいのかどうかもよくわからないが・・・)のすべてが気持ちいい。しかし、専門外なので「どういう風にいいか」はあまりうまく説明できない。まあ、そっち方面の評論家ではないのでそれでいいのだけど・・・

しいて言えば、シンプルな良さ、かな。あるいはヘンに「作り込んで」いない(ようにシロートには聴こえる)ところだろうか。まあ、好きなものを説明するのに「嫌いなもの」を持ってくるのはあんまり良い趣味じゃないかもしれないけれど、とにかく私はどんなジャンルの音楽でも「あざとさ」がハナに付くとイヤなのです。

私が言う「あざとさ」は語感の説明が難しい(もしかする「粋」の反対、つまり「野暮」に似ているのかも・・・)けれど、「ポップ」だったり「大衆的」だったり、あるいは「情緒的」だったとしても、必ずしも「あざとい」とは限らない。インテリ(笑)向け高級現代音楽だって、私からすれば「あざとい」と感じるものはある。というか「シンプル」を「ストレート」に置き換えれば、「ストレートであざとく無い音楽が好み」という私の個人的嗜好性が、たまたまジャズとフィットしているのかも、という予感はある。

それはさておき、J.ディラのカッコ良さは、「あざとさ」を感じさせない小気味良さだろうか。打ち上げの席で原さん、柳樂さんらに教えてもらったけど、「その世界」ではJ.ディラは特別の存在らしい。確かにこのところ(と言っても2〜3年だけど)聴いてきたヒップ・ホップ・ミュージシャンの中ではずば抜けている。と言ってもそれは「そのジャンルのシロート耳」での話だから正確に言えば、単に「好き」ということなのだけど・・・

ちょっと思ったのは、私のような門外漢にヒップ・ホップ(と言っていいのかもよくわからないのだけど)の良さを伝えようと思ったら、今日の原さんのように「その道のトップランク」の演奏を、「固め打ち」で聴かせるという手法が効果的なような気がする。つまり、シロート耳に最初からいろいろな演奏を聴かせるとイメージが散乱、というかむしろ混乱してしまい、「聴きどころ」が掴みにくいのだ(だから中山さんの「マイルスを聴け!」はある種の正解かも)。

また、少々恐れ多いことを言わせていただければ、私と原さんの音楽的嗜好は(部分的には、だと思うけれど)けっこう近いように感じた。というのも、今日かけてもらったこれほど大量の、しかも未知の音楽ジャンルの音源のほとんどが気に入るという体験は、めったに無いからだ、

というわけで、今後原さんお好みのテーマなら何でもけっこうですから講演お願いしますと言ったら、原さんは快諾してくれました。みなさん、乞うご期待!

そんなわけで打ち上げも盛り上がり、深夜のいーぐるで原さんとBack to Back、原さん持参のJ.ディラに私はウルマーAre You Glad To Be In America? を繋げたりして楽しく遊んじゃいました。


付け加えれば、たまたまcom-postメンバーで話題のグラスパー本に寄稿した益子さんや仕掛け人柳樂さんもいたので、話題がこの本に及んだが、柳樂さん、益子さんらからグラスパー本の制作意図を聞き、大いに共感。巷では、私がグラスパー本をディスるのを期待している向きもあるようですが、それはちょっと見当外れ。

私がグラスパーを「ジャズじゃない」と言ったので、それを否定的意味と受け取った誤解からの憶測だろうからこの際言い直します。「今のグラスパーの音楽を、あえてジャズという必要は無いんじゃない?」と言うのがより真意に近い。まあ、ジャズに対するリスペクトから、彼らが「ジャズ」にこだわるのはありがたいのですが・・・