4月5日(土)

中平穂積さんの写真集『Hozumi Nakadaira : Jazz Giants 1961-2013』出版記念パーティに出席する。中平さんはぼくらジャズ喫茶オヤジの大先輩であると同時に「お父さん」として、親しまれ慕われているジャズ界のドンである。それにふさわしく新宿京王プラザでのパーティは、受付に長蛇の列。私の前にはNHKの連ドラ「なっちゃんの写真館」のモデルとなった写真館の何代目だったか、山口百恵の写真集で一世を風靡した名写真家,立木義浩さん。彼、確か70代のはずだが長身で極めてダンディ。モテるだろうなあ。

開会はあまりの盛況のため受付に手間取り、その「場つなぎ」のライヴが思わぬ熱演に。それこそ「ドン」の出版記念パーティだからこその信じられない場面が・・・渡辺貞夫さんのパーカー・チューンに坂田明が、中村誠一が何とクラリネットで、そして後からはニューオルリンズ・ジャズの普及で知られた外山善雄までが加わるという異例の展開。しかも演奏が凄い。ジャズ関係者のパーティならではのホンキ乗り。貞夫さんの本当に久しぶりのパーカー・チューンに坂田さんがフリーク・トーンを交えつつ参戦。これは見物。この場に居合わせた方々だけの後々までの語り草になるだろう。しかしナベサダさん、カッコいい。演奏はもちろん、そのチャーミングなお人柄も・・・

しかし、私が「万感胸に迫った」のはそういうことだけではない。私が今あるのは、まだ高校生のころ、中平さんが新宿に開いた伝説の名ジャズ喫茶『DIG』の扉を開いたことに始まる。柔道部の友人に連れられたこの「異空間」を訪れた時にかかっていたコルトレーンの、確かインパルス盤も何かの因縁。

結局、そのときの強烈な印象が私をしてジャズ喫茶稼業にのめり込ませ、なんだかんだいろいろ、いろいろあったけれど、今になってみれば幸せな人生。それはジャズのおかげであると同時に中平さんとの出会い、お導きあってこそ。そして、壇上には小学館さんから『JAZZ 100年』の花輪が掲げられている。大先輩の素晴らしいジャズマン写真が、私が恐れ多くも監修させていただいている隔週刊行CD付きムックの表紙を飾っているのだ。これほど嬉しくも名誉なことは無い。ジャズを聴き、ジャズに関わってきて本当に良かった。

その感動は、まずはジャズに、そしてジャズを知っているからこそ撮れた中平さんならではの写真集に凝縮されている。そこにジャズの素晴らしさが見事に切り撮られているのだ。そしてその感動を、ジャズに関心・興味をもっておられる多くの方々に伝えるのが中平さんの志を継ぐべき私の役割と、あらためて深く心に刻む一夜であった。その決意は、現在刊行中の『JAZZ 100年』に全力で傾注。たいへんだが嬉しい仕事。

最後に、これだけの盛会を見事に取り仕切っておられた名ジャズ・プロデューサー、伊藤八十八さん、お疲れさまでした! しかし、ジャズ界はほんとうにいいなあ・・・