7月26日(土)

ハードバップ・マニア、阿部さんのリー・モーガン特集、期待通りの素晴らしさだった。ある意味でベタな選曲とも思えるが、それでいいのだ。誰もが知っている名盤が名盤足りえるのも、モーガンの参加に負っているところ大だからである。たとえば、一般にはコルトレーンの名盤に数えられる『ブルー・トレーン』(Blue Note)にしても、このアルバムが名盤として流通して来たのはモーガンの名演があったからこそ。

また、モーガンクリフォード・ブラウンの後継者のように言われているが、細かく聴くとかなり音楽のタイプが違う。ブラウニーはけっこう理詰めで攻めてくるところがあるけれどモーガンはもっと生理的。フレーズが自然にカッコ良くなっちゃった、みたいな塩梅なのだ。

ある意味、天然の良さがモーガンの魅力と言えるだろう。それにしても彼の死に方はカッコいい(もちろん他人事だからだけどね)。聞くところによると22口径ベレッタだそうで、思いっきり逃げちゃえば尻の肉を抉られるぐらいで済んだんじゃあなかろうか・・・なんてヒジョーに無責任なことを考えるが、きっと彼はツッパっちゃったんでしょうね。「撃てるもんなら撃ってみろ」とか・・・

それはさておき、近頃はこうした「あぶない」ジャズマンも少なくなり、その分ジャズから艶が失われたような気もする。モーガンのフレーズが持つやんちゃな感じやヒップな感覚は、やはり演奏者の日常感覚から生まれるような気がする。

ところで、暑さのせいかもしれないけれど、モーガンやマクリーンなどハードバッパーのフレーズをずっと追いかけて聴いていると、これって一種のアナグラムなんじゃないのかなあ、などという荒唐無稽な発想が浮かんできた。もちろん私は「共感覚」の持ち主じゃないので、音符がアルファベットに置き換わる、なんてことはないのだけど、原メロディが元の文章だとしたら、彼らのアドリブ・フレーズはそのアナグラム変換的なシロモノのように聴こえるのだ。

つまり原文とは違えど、文意は通っている。表音文字ではあるけれど、構成要素は同じ。漠然とではあるけれど「無意識領域」では、なにか不思議な作用がジャズのアドリブを「面白いもの」として聴かせる働きを成しているのではなかろうか。

多分、暑さゆえの妄想だろうけど・・・