2月28日(土)

「いーぐる連続講演」はもともとジャズ周辺音楽の講演だったが、ここ数年、まさにジャンルレスでいろいろな音楽のイヴェントを行っている。というのも、いまどき「ジャズしか聴かない」などという音楽ファンは少数派で、大多数の方々はジャンル横断的にさまざまな音楽を楽しんでいるし、また、ジャズ自体が隣接領域の音楽を貪欲に取り入れている。

こうした音楽状況では、とりあえずいろいろな音楽に触れてみることが大切だろうということで、今回のおおしまゆたかさんによるほぼ3時間に及ぶ「グレートフル・デッドのコンサート疑似体験」が行われたわけだが、いろいろな意味で面白かった。

というのも、たまたま先週行われた原雅明さんによるマッシヴ・アタックを、これもアナログ2枚組みをまるまる聴き通すというイヴェントがあり、いやでも比較してしまう。まさに対照的。私の感覚ではマッシヴ・アタックは「黒っぽい」のだが、グレートフル・デッドは「白っぽい」。

しかし、両者を正反対と言う意味で「180度違う」と言ってしまうのもまたちょっとズレるような気がする。そこで頭をよぎったのが「120度ぐらいの位置かな」という、極めてあいまいな気分。そして同時に「では240度の位置には何が?」という、これまた非常に漠然とした感想なのだが、今の気分ではその場所に「褐色の音楽」が来るのでは、などと思いましたね。そのことと直接関係があるわけではないけど、打ち上げの席でおおしまさんに懸案のアラブ圏の音楽特集をお願いする。

デッド自体に触れると、これが巧いのですね。決して偏見を持っているわけでは無いけれど、なんとなく「ロックのライヴは荒い」というイメージが払拭されました。デッド入門者としては「どこが聴き所」なのかよくはわからなかったけれど、確かな技術に裏打ちされた演奏は聴き進むほどに「デッド・ワールド」に引き込まれる。

それから、これはロックならではの聴き所と思ったのはやはりヴォーカル。それもコーラスが絡んでくる彼らの歌声はなかなか魅力的。ロックはそれほど聴き込んでいなかったけれど、熱狂的ファン層の存在はよく理解できる。これを機会に聴き逃がした「ロック名盤」を少しずつ聴いていってみようかと思いました。おおしまさん、今後もよろしく!