5月24日(日曜日)

有楽町コットン・クラブにてサローキ・アーギを観る。彼女のことはほとんど知らなかったが、5月15日の「いーぐる連続講演」で、アオラ・コーポレーションの高橋めぐみさんがハンガリーにおける彼女の音楽活動を詳しく紹介してくれ、その際アルバム「くちずづてに」も購入。これがかなり良く、このところへヴィー・ローテーションで聴く愛聴盤となっている。

ファースト・セット、サローキはテナー・サックス、トロンボーンにギター、ピアノ、ベース、ドラムスという「純ジャズ」2管セクステットを率いて登場。バック・バンドの編成からもわかるように、完全な「ジャズ・ヴォーカリスト」としての面が強く出たステージだ。

アルバム「くちづてに」はサローキを含む女性ヴォーカル3人のアルバムで、かなりフォーク色というかいわゆる「ワールド・ミュージック的」な要素が強かっただけに、当初、若干の戸惑いはあったものの、良く考えれば、フライヤーの紹介文にもあったように、サローキはベスト・ハンガリアン・ジャズ賞も受賞している、れっきとしたジャズ・ヴォーカリストでもあるだ。

気持ちを入れ替えて彼女の歌声に耳を傾ける。バック・バンドのアンサンブルがこなれるまで若干「暖気運転」の間はあったものの、中盤からサローキの歌声も軌道に乗り、「ジャズ・ヴォーカリスト」としての実力を見せてくれた。

興味深かったのは、タイトルは良く聞き取れなかったが、バック・バンドなしで歌ったフォーク・ソング。歌唱法がジャズを歌うときとはまったく違うのだ。音程を微妙にずらし日本でいう民謡調のこぶしのような歌い回しが素晴らしい、独特の歌い方。

続いてこれはサーヴィスか、日本の「さくら、さくら」をやはりソロ・ヴォーカルで披露。どちらも声質が良く、歌唱テクニックも第一級。聴き慣れたジャズ・ヴォーカルではかえってわかりにくかった彼女の歌手としての実力の一端が垣間見れた瞬間だった。

そう言えば、バック・バンドと共演した歌も、フォーク色の強く出たナンバーの方に彼女の持ち味が良く出ていたようにも思える。このあたり、「世界音楽」としての「ジャズ」と、それを歌うアメリカ以外の歌手のあり方の一面が浮き彫りになったようにも思える。

公演後高橋さん夫妻に聞いたところ、サローキはアルバムによっていろいろなバック・バンドを使い分けているという。そういう意味では、今回の公演は彼女のさまざまな顔のうちの一つということなのかもしれない。ぜひ違った編成のバンドとの共演も聴いてみたいものだ。それだけの探究心を湧かせる魅力がサローキにはある。