10月3日(土曜日)

今話題の『JAZZ THE NEW CHAPTER 3』の出版を記念した、吉本秀純さんと柳樂光隆さんによる「新世代ラテン・ジャズ特集」、まさに眼からウロコの講演だった。第一に「ラテン・ジャズ」のイメージが一新したこと。これが実に大きい。今までもそれなりにラテン・ジャズは耳にしてきたが、それらを聴くとき、どうやら耳のスイッチを「いわゆるラテン・ジャズ・モード」にチューニングしていて「それなりに」楽しんでいたことが発覚。つまり「素敵なお楽しみ音楽」という大枠に入れて聴いていたフシが無きにしも非ず。

それに対し、今回吉本さんがセレクトしてくれた音源は、明確にラテン・フレイヴァーがありつつ、「もろジャズ・モード」でも充分に聴ける。これが新たな発見。その理由を吉本さんは実に明確に説明してくれた。講演冒頭で「レコード店では“ワールド”に分類されてしまうジャズ色の強い作品」というくくりで紹介された音源は、確かにジャズファンの眼には付き難い。つまり、発信者と受信者がうまく市場で出会っていないのだ。これはモッタイナイ。

聞くところによると、吉本さんはもともとワールド・ミュージック方面に詳しいという。しかしそうした音源を、ジャズなど「違った価値観から」眺め、紹介する視点が吉本さんにはあるのだ。これが強い。言い方はキツいかもしれないが、いわゆる「専門バカ」の反対で、良い意味で音楽全体を偏り無く紹介しようとするスタンスが素晴らしい。こういう発想は大いに学ぶべき。

門外漢の私が言うのは気が引けるけれど、個人的に今回の吉本さんの選曲かなり気に入った。それは前述の「ジャズとして聴ける」ということもあるけれど、それ以上にエスニック・テイストが素晴らしいのだ。これは明らかに本場アメリカのジャズには無かったもの。これは新鮮。もちろんそうした要素が未来のジャズとどういう関係になるのか、即断は出来ないけれど、直感的にまだまだジャズの可能性はあるんじゃないかと大いに元気付けられたことは事実。

また、聞き手に回った柳樂さんの司会・進行もわかりやすく、ようやく「JTNC」の狙いが見えてきたのも今回の講演の大きな収穫だった。というわけで、大阪在住のため来京のタイミングに合わせてということになるかと思うが、今後も吉本さんに講演をお願いすることを決定。柳樂さん、ほんとうに素晴らしい方を紹介してくれてありがとう!



10月5日(月曜日)

既に21回を数えるユニバーサルさんとディスクユニオンさんによる合同新譜紹介イヴェント「NEW ARRIVALS」、今回も素敵な新譜が大音量でじっくりと聴けた。中でも話題のコンポーザー・アレンジャー・ピアニスト、挟間美帆の新作「TIME RIVER」は圧巻。この人ほんとうにセンスがいい。私は平均的ジャズファンの常で、どちらかというとスモール・コンボ好み。ラージ・アンサンブルにはあまり関心がなかったのだけど、これは聴かせる。

ユニオン羽根さんご紹介のアルバムでは、JON IRABAGONの「BEHIND THE SKY」が良かった。演奏に勢いがありかつ新鮮。昨日買ったばかりなのでまだ1回しか聴いていないがこれはオススメ。ヴォーカルではスペインの女性ヴォーカリストMAYTE ALGUACIL の「DAY BY DAY」がなかなかいい味。

ユニバーサルさんの旧譜再発も充実していて、まだ1枚しか聴けていないが若き日のヒノテルとジョーヘンの共演はまさに熱演。これもオススメですね。明日以降いろいろ聴いて楽しませていただきます。なお、次回の「NEW ARRIVALS VOL.22」は11月2日(月曜日)、話題の新譜をその場で購入できるメリットはたいへん大きいので、ぜひお気軽にお越しください。