10月18日(土)

原田和典さんのプロデュースによる『JAZZ SAX』(シンコーミュージック)刊行記念イヴェント、やってみてようやくわかったことがいくつかあった。まず、なぜサックスなのかということ。アルバム紹介本はずいぶんあるが、楽器別だと、最近は売れ線のピアノ・ジャズものぐらいしか目にしたことがない。
原田さんの説明によると、版元のシンコーミュージックはロックが専門なので、ジャズ本は初めて。そして、ロックと言えばギターだし、ジャズと言えばサックスが一般的イメージなのだという。ナルホド、納得である。
しかしそれ以上に納得したのは、実際に『JAZZ SAX』を分担して執筆した筆者の方々の各自一番お気に入りのアルバムを聴かせていただいて、改めて「ジャズはサックスだ」と実感したからだ。つまり、「サックス・ジャズ」は、このところ聴きやすいピアノ・トリオがもてはやされた結果、ジャズ本来の油っこいドロドロ感が忘れられがちな風潮に対する警鐘になっているのである。
それはアルバム・セレクトを担当した原田さんの明確な意思の反映であり、また、その意図を汲み取った、各筆者の皆さんのジャズ理解の深さだろう。
私はパーカー・サヴォイ・セッションから《クラウンスタンス》《バード・ゲッツ・ザ・ワーム》をかけ、パーカーの聴き所は、アルトの音色の力強さであり、リズムへの乗り方であり、そしてスピード感であると説明させていただいた。
村井康司さんがドルフィーの『アウト・ゼアー』から《アウト・ゼアー》《エクリプス》をかけ、やはりドルフィーの魅力が独自の音色の力強さであり、その意味でパーカーの後継者ということが出来ると発言、わが意を得たりであった。つまり、実際に音を聴いてみれば両者の関係は歴然で、パーカー・ファン代表ともいえる鈴木洋一さんも深く納得されていたようだ。
そのほか須藤克治さん紹介による、ジャズ・ロックのイメージが強いジョン・クレーマーの意外な恐持て路線や、原田さんがアンコールでかけたオデオン・ポープの強烈な演奏など、私の知らない好盤がいくつもあり、アルバム紹介本としての有効性も実感した次第である。選曲リストは明日掲載いたします。