9月20日(土)

須藤輝さんによるESP特集、今回もゲストは吉田隆一さん。玉石混交で聞こえたレーベルだけに、3回目ともなると「石」の含有率が高くなるんじゃないかという懸念も何のその、むしろ今回が一番聴き応えがありました。なんと言っても、オーネット・コールマンアルバート・アイラーといったフリー・ジャズの巨匠たちの音楽の説得力はただものじゃない。

久しぶりに聴くオーネット「タウン・ホール」はやはり素晴らしく、そしてアイラー「スピリッツ・リジョイス」が醸し出す、なんとも不穏な気配はまさに60年代的。

また、ハッキリ「石」と言っていいような演奏ですら、表現しようという気迫みたいなものは確実に伝わってくるのだ。ジャズかそうでないかにかかわらず、この「切実感・切迫感」はまさしく60年代サブカルならでは。近頃の洗練の極みのような音楽の対極が、まさにESPレーベルなのだった。

また、ジャズ演奏に限ってみても、たとえば、ソニー・シモンズなど、サイドマンたちも含め、明らかに自分の声を持っている。好き嫌いはあるだろうが、これこそがまぎれもないジャズならではの特徴。今のシーンばかり追っていると、こうしたジャズの原点というか座標軸を見失いがち。そういう意味では、滅多に聴かないESPのアルバムたちは「ジャズの業」「表現者たちの業」を強烈な形で思い出させてくれる。

たまたま現代ジャズ批判のようになってしまったが、21世紀の今日でも明らかにジャズの伝統に連なる優れた表現者たちは確実に存在する。つい最近、六本木スーパーデラックスで観たICPオーケストラの面々や、新宿ピットインのアヴィシャイ・コーエン(トランペット)など、ジャズならではの良さを堪能させてくれました。

新譜だって丹念に探せばいいものはあって、このところ定期的に開催しているユニバーサルジャズさんとディスクユニオンさん共同開催による新譜特集「NEW ARRIVALS」で紹介されるアルバムは、けっこう掘り出し物がある。最近ではEYM トリオや、これはキング・インターナショナルからの新譜、トム・ハレルのトリップなど、かなり聴き応えがある。

また、ぜんぜんジャズじゃないけれど、ベッカ・スティーヴンスの「Weightless」、けっこう声が気に入りました。なお須藤さん、次回は待望のBYG、そしてヨーロッパ・アヴァンの開祖、FMPあたりもお願いする予定です。ご期待ください。

最後に付け加えれば、須藤さん、吉田さんはまさに名コンビで、須藤さんの背景説明と吉田さんの奏法解説をセットで聞くと、リアルに1960年代アメリカ文化の光と闇、そしてそれぞれ個性的なミュージシャンたちのポートレイトが浮き彫りとなる。面白いと同時に実に勉強になる講演でした。お二方、今後もよろしく!