5月15日(金曜日)

代官山『山羊に、聞く?』に大塚広子さんのD.J.を聴きに行く。「ラテン×ジャズ×グルーヴライヴ」と銘打ったこの日のイヴェント、2014に大塚さんがリリースしたアルバム「PIECE THE NEXT」に収録された新ユニットRM jazz legacyにラテン・パーカッションを加えたライヴ演奏も、このところラテン・ミュージックに興味を持っている私としては大いに楽しみ。

メンバーは

類家心平(tp) 藤原大輔(ts) 坪口昌恭(key) 守家巧(b) 山北健一 / ぺぺ福本(timbales, conga) 吉岡大輔(ds)

オープンと同時に大塚さんのD.J.が始まる。私は何度か聴いているけれど、けっこうガチなジャズも顔を出し、しかし今夜のテーマ、ラテン・フレーヴァーの組み込み方も巧み。お客の気分をうまい具合にライヴへと誘うテクニックは見事。

ファースト・セットは思いのほかジャズっぽい、というのもおかしいけど、想像していたほど「ラテン寄り」の演奏ではなく、かなり骨っぽい。私の耳には類家のトランペットも藤原のサックスも、もろジャズ。坪口のキーボードが彩りを添え、守家のベースが「ジャズ」と「ラテン・パーカッション」の紐帯となっている様子。

しかしリズムはかなりタイトで、おそらくそれは吉岡の切れの良いドラミングに負うところが大きいのだろう。ただ、第一印象ではまだラテンとジャズの融合というところまでは行ってない様子。

このイメージが大きく変わったのはセカンド。ライヴの常だけどリズムがこなれ、文字通り快適なグルーヴがメンバー全員を一つに纏め上げる。ラテン・パーカッションが醸し出す夏らしい気分と共に、確かに「今、現在のジャズ」を実感出来た。このバンド、おそらく回数をこなすほどにラテンとジャズの融合が進み、まだまだ発展の余地ありと見た。

ともあれ、大塚さんの試み、いいとこ突いていると思いましたね。


5月16日(土曜日)

好例の「いーぐる連続講演」今回はワールド・ミュージックCD輸入で知られた「アオラ・コーポレーション」の高橋めぐみさんが前・後半に分けてサローキ・アーギとハンガリー女性ヴォーカルの特集と、マリアナ・バラフを中心に多彩なアルゼンチン・ネオ・フォルクローレを紹介するというもの。

私は二人とも知らなかったが、どちらも素敵。サローキはハンガリーの歌い手だが、私の知っている音楽の範疇で言えば、昔聴いたブルガリアン・ポリフォニーにちょっと似ている。中でもサローキがボグナール・シルヴィア、ヘルツク・アーグネシュといっしょに歌うアルバム「くちづてに」がたいへん良く、さっそく購入。CD屋さんにやっていただく講演はその場で気に入ったアルバムを買えるので、たいへんありがたい。

後半のアルゼンチン歌手、マリアナ・バラフはお父さんがアルゼンチンのジャズマンという音楽一家。こちらもまったく予備知識なしだったが、聴き進むうちバラフの魅力が見えてくる。中でも新譜の「バジスタ〜谷に住む女」が良く、これも購入。ラテン・ミュージックの評論家ではないので的確なことは言えないけれど、声に独特の力・個性がありますね。こちらも気に入りました。

かなり大雑把かつ適当な印象だけど、両アルバム共にいわゆるアメリカン・ポップスにはない「歌声そのものの魅力」があって、そういう視点に立てば、かなりジャズ・ヴォーカルと同じスタンスでの評価も出来るのでは、などと思いました。

アオラ・コーポレーションさん、ぜひこうした世界音楽の紹介&即売の試み、いーぐるで定期的に行っていただきたいです。今後もよろしく。