『いーぐる連続講演 : 第439回』
「私の好きなジャズ」その2〜黒々グルーヴ編 2011年2月26日 解説 後藤雅洋
1, ケニー・バレル『ミッドナイト・ブルー』(Blue Note)より
《ウェイヴィー・グレイヴィー》 5’ 46”
スタンリー・タレンタイン(ts) ケニー・バレル(g) メジャー・ホーリー(b) ビル・イングリッシュ(ds) レイ・バレット(conga) 録音1963年
ゆったりとしていつつ切れ味の良いリズムに乗って、レイジーなタレンタインのテナーが黒々としたフレーズを歌い上げる。
2, グラント・グリーン『ザ・コンプリート・カルテット・ウイズ・ソニー・クラーク第1集』(Blue Note)より
《エアー・ジン》 7’ 30”
グラント・グリーン(g) ソニー・クラーク(p) サム・ジョーンズ(b) アート・ブレイキー(ds) 録音1962年
黒さのキモは、グリーンのエッジの張ったギターの音色だ。
3, ハンク・モブレー『ワークアウト』(Blue Note)より
《ワークアウト》 9’ 59”
ハンク・モブレー(ts) グラント・グリーン(g) ウイントン・ケリー(p) ポール・チェンバース(b) フィフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) 録音1961年
グリーンがらみの黒い演奏をもう一つ。モブレイも吹きまくる。
4, ジョニー・グリフィン『ザ・ケリー・ダンサーズ』(Riverside)より
《25 1/2 デイズ》 4’ 38”
《ハッシャバイ》 4’ 53”
ジョニー・グリフィン(ts) バリー・ハリス(p) ロン・カーター(b) ベン・ライリー(ds)
録音1961,62年
テナーの音色と独特の「間」が黒いグルーヴ感覚を醸し出す。
5, チャーリー・ラウズ『ヤー!』(Epic)より
《あなたは恋を知らない》 6’ 28
チャーリー・ラウズ(ts) ビリー・ガードナー(p) ペック・モリソン(b)
デイヴ・ベイリー(ds) 録音1960年
音色の黒さではラウズも負けていない。
6, ジミー・スミス『バック・アット・ザ・チッキン・シャック』(Blue Note)より
《マイナー・チャント》 7’ 30”
スタンレイ・タレンタイン(ts) ケニー・バレル(g) ジミー・スミス(org) ドナルド・ベイリー(ds) 録音1960年
タレンタインのソウルフルなテナーに注目、もっとも黒いテナーか。重心の下がったスミスのオルガンの醸し出す独特のムードは黒人音楽特有の気分。
7, ホレス・パーラン『アス・スリー』(Blue Note)より
《アス・スリー》 4’ 32”
ホレス・パーラン(p) ジョージ・タッカー(b) アル・ヘアウッド(ds) 録音1960年
ベースとドラムスだけでこれだけコーフンさせる音楽も珍しい。
8, ローランド・カーク『ヴォランティアード・スレィヴリー』(ATL)より
《アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー》 7’ 56”
チャールス・マギー(tp) ローランド・カーク(ts,fl,etc) ディック・グリフィン(tb) ロン・バートン(p) バーノン・マーチン(ds) ソニー・ブラウン(ds) 他 録音1969年
アレサ・フランクリンの名唱で知られるR&Bナンバーを、完全に自分たちの音楽と している。途中にコルトレーンの《至上の愛》のフレーズが出てくるのも面白い
9, グレイス・ジョーンズ『リヴィング・マイ・ライフ』(Polystar)より
《マイ・ジャマイカン・ガイ》 6’ 01”
グレイス・ジョーンズ(vo) バリー・レイノルズ、ミッキー・チャン(g) ウォーリー・バドロウ(key) スティッキー・トンプソン(perc) ロビー・シェイクスピア(b) スライ・ダンバー(ds) 録音1982年
「黒さ」を感じさせるポイントはやはりリズムだ。私はスライ&ロビーの叩き出す「重黒い」リズムに痺れます。グレイス・ジョーンズの声も根性が入っている。
10, ジェームス・ブラッド・ウルマー『アー・ユー・グラッド・トゥ・ビー・イン・アメリカ?』(Rough trade)より
《プレッシャー》 4’
《ジャズ・イズ・ザ・ティーチャー》 4’
オル・ダラ(tp) オリヴァー・レイク(as) デヴィッド・マレイ(ts) ジェームス・ブラッド・ウルマー(g) アミン・アリ(b) シャノン・ジャクソン(ds) 録音1980年
シンプルかつタイトなリズムが極めて煽動的。濃いブラック・ミュージックのエッセンス。
11, フェラ・クティ『ファンキスト・グルーヴズVol.1』(Victor)より
《フェフェ・ナ・エフェ》 8’ 12”
フェラ・クティ・アンド・ジ・アフリカ70 録音1973年
60年代末にアメリカに滞在していた経験を持つフェラ・クティが、故郷ナイジェリに戻って吹き込んだ録音。当時のナイジェリアの政治状況を反映した極めて戦闘的な音楽。冒頭のフェラ・クティの言葉(ガーナのアシャンティ人の諺)を意訳すると「美とは戦い続ける女性に与えられる祝福である、戦わなければ美は去ってゆくだろう」
Total Time 81’ 34”