4月9日(土曜日)

小針俊郎さんによる「アニタはケントンが嫌い」という刺激的な切り口によるアニタ・オディ特集、期待通り素晴らしいものだった。アニタというジャズ・ヴォーカリストの個性・特徴を浮き彫りにすると同時に、それゆえにこそ彼女の「ケントン嫌い」という結論が実に説得力をもって聴き手に迫って来た。

もちろんスタン・ケントンだって素晴らしいバンド・リーダーであるには違いなかろうが、確かに彼のバンドは、アニタが好んだジーン・クルーパ楽団の持つ快適なスイング感には乏しい。どんなバンドにも「持ち味」があるものだが、要するにアニタとケントンは「相性」が悪いということだろう。

そして何より素晴らしいのは、こうした結論が実際の音源によって具体的に実証されているところだろう。つまり小針さんの意見は決して「独断」ではないのだ。それにしても小針さんの指摘は鋭い。あまり意識したことは無かったが、エラとアニタの共通点として、どちらもドラマーがリーダーのビッグ・バンドでデビューしていること挙げ、それが二人のスイング感の良さとして現れているという視点には、実に納得。

それにしてもアニタの歌は素晴らしい。久しぶりに見た「ニューポート」のライヴ映像で見るアニタの歌いぶりは、まさにプロフェッショナル。白人女性ヴォーカルのナンバー・ワンはアニタであるという小針さんの意見には、まったく同感。

「歌」はかなり聴き手の好みが影響するジャンルとは言え、あるレベルを超えた歌手に対する評価は、さほど偏りが出ないものだ。というわけで、またまた小針さんに講演をお願いすることを決めました。次回の御題はビング・クロスビー。日時は6月18日(土曜日)午後3時30分からです。乞うご期待!