5月17日(土)

「ジャズジャーナリズムの現状を考える」の3回目を開催する。いつもとお客様の顔ぶれが違う。それに、開会時間のはるか前からかなりの人数が着席、ちょっと緊張する。シンポジウムは、まず村井康司さんによる日本のジャズジャーナリズムの現状報告によって始まる。「スイングジャーナル誌」対「反主流派メディア」という構図が崩れつつあることを前提に、どのメディアも比較的似かよった内容になってしまう理由として、過度の商業主義を挙げる。
村井さんの報告に続いて、益子博之さんがジャズジャーナリズム偏向の背後に、文化状況全体を覆うポストモダン的風潮があることを指摘。それらを踏まえつつ私が、自分の体験を基に、ジャズの「認識の切断面」について思うところを述べる。
以下3人による自由討議に入るが、モダン、ポストモダン解釈の微妙な違いが浮かび上がる。それに伴って、具体的なジャズ史におけるポストモダン状況の始まりの時期、またポストモダン状況自体に対する評価にもズレが生じる。当然のことながら討論は白熱し、かなり現代思想の本質的部にまで話が及んでしまい、一般のジャズファンの皆様にとっては少しばかり馴染みのない方向へと議論が波及してしまったかもしれない。
それを反映してか、途中退席者が数名おられたが、これは私たちの責任であると同時に、ある程度やむをえないこととして折込済みの事態でもあった。
最後に「ジャズの見取り図」の可能性と必要性について議論し、それを作ることの困難さを認識しつつも、叩き台としての存在意義について3人の考えは一致した。そして、現在の偏向したジャズジャーナリズムに一石を投じるためのささやかな試みとして、私たちが新たにジャズブログを立ち上げることを予告し3時間に及ぶ討論は終了した。
最後に参会者の皆様との質疑応答に移るが、音楽を一切かけず長時間に及ぶ議論に最後までお付き合いいただいた方たちだけに、非常に有意義な質問がいくつか出され、私はこれだけで今回の試みは成功したと思った。参加者総数30名は満足すべき数字だろう。参会者の皆様に心から感謝いたします。
嬉しかったのは、かなり難解な議論であったにもかかわらず、打ち上げに3名もの参会者の皆さんが新たに参加され、いろいろとご意見を述べてくださったことだ。当初、参考音源もかけ、一般のお客様にもわかりやすく、という発想もあったのだが、あえてガチンコの議論を展開し、そうした話に興味を持っていただける方に的を絞ろうという狙いは、半ば成功したのではなかろうか。
なお、当日の詳しい内容は、近日中に立ち上がる私たちの新たなジャズブログ上にて公開される予定です。個人的感想として、村井さん、益子さんと公開の場で突っ込んだ議論をすることにより、自分自身が普段考えていることのあやふやな部分が露呈されたのは大きな収穫だった。前述したモダン、ポストモダン議論も含め、この問題は皆さんとともに新ブログ上で展開していくつもりだ。ご期待ください。