7月2日(土)

思ったとおり(だって、ジャズ喫茶で音頭ですよ)、お客様の数は少なかったけれど、コアなファンの方においでいただき、充実した良い会でした。河内音頭(カワチオンドと発音する)、知ってはいたけれど、その背景、実態についてはほとんど無知と言ってよいでしょう。ましてや固め打ちで2時間じっくり「音頭浸け」になったのは初めての体験。

そもそも鉄砲光三郎、の「鉄砲」が本名とは驚きました。どうやら戦国時代以来の鉄砲鍛冶の家系らしい。つまり、河内音頭は彼らの周りで伝承されていた民俗芸能を、光三郎ら鉄砲姓一族が現代風にアレンジしたものらしい。だから民謡と歌謡曲の間のような存在。

鷲巣さんはその源流となった大正時代の音源を紹介することによって、この音楽のリズムが「語り」というか、「ことば」がまず先行していることを説明する。このことは、一見似ている現代の「日本人ラップ」が、まずリズムトラックありきで、後からそれに言葉を乗せているのとは違うことを解説してくれた。確かに、河内音頭の「語り」はわかりやすい(聞き取りやすい)。

興味深かったのは、河内音頭の影響を受けたアリ・ハッサーン・クバーンの存在で、「ワールド・ミュージック」のさまざまなありようを実感した。こじんまりした打ち上げでは、かえって実のある音楽談義が出来、河内音頭を生み出した「音楽社会学」的背景と、ブラックミュージックの関わりなど、なるほど、と思われる斬新な視点が鷲巣さんから出され、この一事をもってしても、今回のイヴェントは成功と言って良いだろう。

まったく内輪の話だけど、熱心な「音頭ファン」として打ち上げにまで付き合ってくれたAさん、Kさんら(初対面です)と雑談するうち、思わぬ共通の友人の名(ダウトミュージック主宰、沼田さん)が挙がり、やはり音楽好きの人脈は同じだなあといまさらながら思ったものだ。

また、鷲巣さんとも、私の学生時代からの友人である、故ハリー金子(陽彦、ヴァージン副社長)や、ロック翻訳家、中江などの名が出てきて、けっこう狭い世界なんだなあと思うやら、いや、似たような趣味の人間は自然と集まるものなんだと納得したりと、楽しい時間を過ごさせていただきました。なお、鷲巣さんには近日中にもう一度、より、ジャズファンにも馴染みのあるテーマで講演をやっていただくことをお願いしたので、ご期待ください。