3月11日(土曜日)

はじめに、今回のジャズ喫茶イヴェントのためはるばる名古屋からおいでいただいた楠瀬さまご夫妻に、この場を借りてあつく御礼申し上げます。また、たいへんな事務方を引き受けてくださったrompercicci 齊藤 さまご夫妻にも深く感謝いたします。そしてご来店のお客さま方には、予想以上の来会者のためサービスに不行き届きがあったことをお詫びいたします。

前回も満席のため入場できなかった方々がおいででしたが、今回は2回目ということもあって、1回目ほどの関心は持たれないだろうというこちら思い込みは見事に覆されてしまいました。今更ながらの「ジャズ喫茶人気」には驚かされると同時に、大いにありがたいことと心から感謝いたしております。

詳しいイヴェントの内容は、いずれ楠瀬さまが前回同様詳しいレポートをお書きいただけると思うので、私はかんたんな感想を述べさせていただきます。

繰り返しになりますが、「ジャズ」ではなく「ジャズ喫茶」への予想以上の関心度の高さは、たいへんありがたいと同時に、そうしたみなさまへの責任のようなものも感じ、改めて気持ちが引き締まる思いです。

まずは心に残ったご発言から。rompercicci 齊藤 さまが、ほぼ毎日のようにして安いアルバムを探索しにレコード店巡りをされているとのこと。私も開店当初はそうしたことをやっていましたが、このところ「いーぐる」でユニバーサルさん、ディスクユニオンさんが即売会付きの「新譜特集」をやっていただけるのをいいことに、レコード店巡りがおろそかになりがち、大いに反省させられました。ゲストの柳樂さんが、rompercicciの選曲は面白いと言っていましたが、その理由が良くわかりました。

また、DUG中平塁さまが、ジャズファンが集う場としての空気をたいせつにしているという主旨のご発言も、大いにうなずけると同時に、「いーぐる」も初心に帰らねばと反省した次第です。それにしても凄かったのは、「ジャズ喫茶ファン代表」Mitchさんの全国ジャズ喫茶巡り。その数の多さ、熱心さには驚かされましたね。こうした方々が「ジャズ喫茶」を支えてくれているのだと、改めて気付かされました。

最後に当日話した私の「ジャズ喫茶観」みたいなものを、かんたんに述べさせていただきます。私は多様なジャズ喫茶スタイルがあっていいと思っていますが、その中で私自身が目指すのは、ジャズとジャズ・ファン(潜在的にジャズに関心を持っておられる層も含む)の間に立って、両者を結び付ける役割です。つまり、ジャズとファンとの「架け橋」がジャズ喫茶の役回りですね。

そしてその「架け橋」としての役目を果たすには、ジャズに偏りすぎてもいけないし、お客さまにおもねってもいけないということです。「ジャズに偏りすぎ」とは、一方的にミュージシャンの立場に立ってしまうと、かえってファンの意向が見え難くなるということ。また、お客様におもねってしまっても、ジャズの本質を逃がしてしまうということです。要は両者のバランスをどうとるか、ですね。これが難しい。

ひとつ言えるのは、ジャズ喫茶を自己主張の道具としてしまうのは、あまり感心しないということでしょうか。そうした店があってもいいのですが、自分ではそうはなりたくないと思っています。もちろん「架け橋というスタンス自体」あるいは「橋のかけ方」に自己主張が表れるのは当然です。要は「オレの好きなジャズはこれなんだ」みたいなのはファンならではの特権であって、ジャズを聴かせてお金をいただいているプロとしては、カッコ悪いんじゃないかということですね。

誰でも自分の好きなジャズマン、アルバムがあるのは当然で、もちろん私もあります。しかし私は、自分の趣味が自覚しない偏りがあるだろうということもわかっています。というか、本来「趣味」というものは偏っているものですよね。しかし「ある傾向のジャズ」しか渡らせないような「橋」は、「ジャズ」と「ジャズファン」の良い架け橋とは言えないでしょう。

ですから、個人的趣味を一度「カッコ」に入れ、ちょっと引いた目線でジャズの現状、実態を冷静に観察し、しかる後に塩梅よくファンに伝えるという高等戦術が、ジャズ喫茶店主には求められるのではないかと思うのです。もちろん自分がそれを100%出来ているとは思っていませんが、そうした方向を目指しているということです。

ともあれ、2回目のイベントも大成功で、打ち上げも満員盛況。ジャズ喫茶店主、関係者のみなさまの間にいい関係が結ばれました。実を言うと、私がこのイヴェントでもくろんでいたのはそういう「コミュニケーションの場」を作ることであり、そういう意味では今回の企画、100%うまくいったと思っております。

とりあえず。