7月18日(月)

村井康司さんら音楽仲間4人で連れ立ち、面白いトークイヴェントを聞いてきた。出演は松山晋也さん、サラーム海上さん、プランクトン代表、川島恵子さん。内容は、8月1日(月)に渋谷クワトロで行われる、コノノNo.1+カサイ・オールスターズ公演の紹介。

コノノNo.1もカサイ・オールスターズもジャズファンには馴染みのない名前で、もちろん私もこのトークイヴェントで始めてその全貌を知った。早とちりもあるかもしれないけれど、理解した限りで説明すると、要するにアフリカの民族楽器として知られる親指ピアノ「リケンベ」(マイルスがカインド・オブ・ブルーを作る際にインスパイアーされた楽器)をエレキ化して大音量で演奏するのがコノノNo.1で、彼らはコンゴ出身。

フライヤーの文句丸写しだが「民族打楽器とエレキギターを駆使したアーシーなアフリカン原始サウンド」がカサイ・オールスターズだそうである。それにしてもアフリカ、コンゴ地方のカサイ川に由来する「カサイ」も、門外漢にとっては「葛西オールスターズ」(なんか演歌っぽいなあ)としか聞こえず、このあたりはプロモーションに苦労しそう。

そして、この、コノノNo.1やカサイ・オールスターズらの音楽を、「コンゴ」と「エレクトロニクス」を足し合わせ、「コンゴトロニクス」と言うそうである。まあ、新世代ワールド・ミュージックとでも理解すべきか、あるいは、後述する「グローカル・ビート」と言うべきか・・・

このところいーぐるの連続講演もぐっと守備範囲を広げ、ジャズ周辺にとどまらず広く“世界音楽”を渉猟するようになり、先日書いたように、10月29 / 30日には『音楽夜噺』を主宰する関口義人さんと共催で『ジャズとワールド・ミュージックの微妙な関係』というタイトルのイヴェントまで開催することになった。だからと言うわけでもないけれど、ジャズ以外の未知の音楽に対する関心はたいへん高まっている。

また、9月17日には『ジャズとワールド・ミュージックの微妙な関係』のプレ・イヴェントとして、松山晋也さんと関口義人さんにいーぐるで講演をお願いしている。そういういきさつもあり、この共同イヴェントのジャズ側のパネリストである村井さんと共に、松山さんにご挨拶をしておこうという含みもあって、このトークイヴェントに参加してみたわけだが、前出のお三方による、映像も含めた出演バンドの紹介はたいへん手際よく、大いに勉強になった。

実を言うと、このところいーぐる連続講演の常連となった柳樂(なぎら)さんから、『GLOCAL BEATS』(CDジャーナル)という本を借りていたのだが、その最初に紹介されている、マルク・オランデルが主宰するクラムド・ディスクにコノノNo.1のアルバムがあり、つい2日前、土曜日のいーぐる講演の際、なぎらさんからこのアルバムを借りたばかりだったのだ。しかし、今日のトーク・イヴェントの時点ではまだ未聴。

未知のジャンルだけに、本に出て来たミュージシャン名とコノノNo.1の名前が一致したのは、後で本を読み返してからのこと。つまり、松山さん、サラームさんのお話を聞いている最中は、クラムド・ディスクについての話など、ところどころ本の記憶が蘇るものの、それが、なぎらさんからお借りしたアルバムと同じミュージシャンたちとの認識はまだ薄い。

そんなわけなので、後で店でコノノNo.1のアルバムを聴いてみて驚いた。実にカッコ良く素晴らしいのである。申し訳ないが、イヴェント会場のスピーカーはさほど大型のものではなく、演奏の細部までは良くわからず、もっぱら映像の面白さ、解説の興味深さに関心が行っていたのだ。だから、解説者の皆さんが彼らの音楽を絶賛していても、どこが? という思いが若干抜け切れなかった。まあ、未知のジャンルだから、まだぼくらには聴き所が掴めないんだろう、ぐらいに思っていたのが正直なところ。

それが、いーぐるのスピーカーで大音量で聴いてみると、迫力満点のノリの良いリズムが、ダイナミックにガンガン迫ってくるのだ。これはぜひともホンモノを見なければなるまい。原雅明さんが、ヒップホップもいーぐるで聴いてみるとまるで違って聴こえるとおっしゃっていたが、再生装置で音楽の印象が変わったり、理解が深まったりすることは、一度体験してみないとなかな分かりにくいものだ(今回はちょっといーぐるの装置の自慢みたいになってしまいましたが、平にご容赦)。