6月30日(土)

今日は久しぶりに私自身が『いーぐる連続講演』をやることになった。お題は「サイドマンとしてのマクリーン」。ジャズ喫茶シーンで昔から人気のあるジャッキー・マクリーンは、サイドマンで参加しているアルバムでも独自の存在感を示している。だから、マニアはブラインド・フォールドでアルバムを聴きながら、「あ、こりゃマクリーンだ」などとつぶやいてほくそ笑んでいたものだった。

また今回の講演は、現在出演中の衛星ラジオ、ミュージックバードの番組『いーぐる後藤のザ・ジャズ・セミナー』でON AIRするため同時録音も行った。ちょっと緊張する。しかしそれもはじめのうちだけ、何しろ自分のお気に入りのミュージシャンだ、次第にいつものペースでトラックごとの「聴きどころ」を解説する。

お客様もいーぐるご常連や友人たちで和やかな雰囲気。何とか無事終了して例のごとく打ち上げ。ジャズ界の噂話や今後の「連続講演」のアイデアなど、取り留めの無い会話の中にもいろいろ前向きの話が出る。長年同じ業界に棲息していたもの同士の楽しい時間だ。

この場を借りて、おいでくださったお客様、友人のみなさまがたにあつく御礼申し上げます。というか、「ジャズ」はこうした人間同士の好ましい結びつきのたくまざる結節点足りうる、素晴らしい音楽であることを改めて実感いたしました。


7月1日(日)

ご町内、四谷『茶会記』でチャーリー・パーカーのSP盤を聴く会がパーカー・コレクターとして名高い三浦和三郎さんによって行われた。これはぜひとも聴かねばと友人たちと駆けつける。『茶会記』は四谷三丁目「笹寺」裏手にあるのだが、ちょっとわかりにくい場所だ。オーディオ・マニアなら、以前中山新吉さんがオーディオ・ショップを開いていらしたところと言えば、分かりがいいのかもしれない。

詳しい事情は知らないが、いーぐるのご常連でもある店主、福地さんが中山さんからこの場所を譲り受けた際、貴重なオーディオ装置も引き継がれたようだ。それはそうと、この店、かなりユニーク。何しろスリッパに履き替えてカウンターに座ると、目の前にデンと鎮座ましますのが小林秀雄全集。訳知りはこれで思わず「うっ」とのけぞることだろう。

それはさておき、やはりSPで聴くパーカーは凄まじい。たまたま前日自分がパーカー派アルトのマクリーンの特集をやり、さんざんマクリーンを聴いた後だけに、両者の違いが歴然とした。要するにパーカーは「音一発のインパクト」で圧倒し、マクリーンは「フレーズの味」が聴きどころという違いだ。

もちろん、絶対的なスケールでは勝負にならないのはいうまでも無いが、それぞれの「聴きどころ」を押さえて楽しむのが賢いジャズファンというもの。それにしても、お客様方が濃い。大昔「いーぐる」開店のころ来店していただいたジャズ評論界の大御所、佐藤秀樹さんやら、「いーぐる連続講演」も何度かお願いした、上不三雄さんなど、ジャズ界のお歴々が居並んで居る。

隣同士に並んで聴く佐藤さんと「やはりダイアルは和みますね」とか、《ドナ・リー》のサヴォイ・セッションでは「パウエル、やりにくそう」などと、ファン同士ならではの楽しい会話が弾む。

なお、今回のイヴェントの仕掛け人は、元「目黒JAZZ研」の平岡さん。いい企画でした!