8月21日(火)

今日は朝から気分が良い。というのも、スポーツクラブで体脂肪率を計ってもらったら18.1%、私の世代の平均値が20%だそうだから、まあ、合格。他の項目も標準値で特に問題ナシ。

仕事を終え、柳樂さんと、大塚広子さんがDJをする六本木アルフィーに向かう。何でも「アルフィー・ラウンジ夏場所」とやらで、大塚さんが元相撲取り敷島、現在はDJもこなす安治川親方と対決するという。これは見物。また、私にとっては、9月29日(土)に「いーぐる」で大塚さんとイヴェントを行うので、その下見の意味もある(ちなみに、この日に限り15:00スタートとなりましたので、お間違えなきよう)。

アルフィーで大塚さんと挨拶など交わすうち、いーぐる連続講演の常連、モフォンゴこと伊藤さんが来る。やあやあなどと言っていると今度はイントロ、茂串さん登場。そしてなんとEMIジャパン会長、行方さんはじめ、ジャズ評論家の大御所、岡崎さん、ディスクユニオンを仕切る実力者、菊田さんといった業界大物連中が続々終結。お二人の人気のほどが知れる。

最初は安治川親方の選曲で、パーカーやローランド・カークといったジャズの王道路線で気持ちよく場の雰囲気がこなれてゆく(後半に出た親方のヴォーカルは玄人はだし)。そして大塚さん登場。明らかに安治川親方とは違うテイストで、リズム、ビートの切れが良い。こういう組み合わせはうまいと思う。

アッと思ったのは、アーサー・ブライスの『イリュージョン』(CBS)がかかったとき。これ、私はブライスベスト・アルバムだと思っている。彼女、こういうのも聴いているんだ! それも前後の流れを乱すことなく、なんともうまい具合にブライスのちょっとばかりクセのあるサックスサウンドアルフィーの空間を満たして行く。巧い!

そして、オーネット・コールマンの『ジャズ来るべきもの』(Atlantic)を実に気持ちよく聴かせ、なんと、ダラー・ブランドでオチをつけるところなど、まことに巧み。なんかこういう書き方をすると、もろジャズ喫茶選曲みたいに思われるかもしれないが、ちゃんと大塚さんはそのあたりのことも心得ていて、間には歯切れの良いリズムのトラックがうまい具合にサンドウィッチされ、アルコールも気持ちよく飲める。現に、最初は「偵察」などと少々緊張して聴いていた私も、大塚さんの選曲の妙に身も心もほぐれ、控えていたワインのボトルにもつい手が伸びる回数が増える始末。

以前、柳樂さんが、「後藤さんと大塚さんは趣味が似ていると思う」などと言っていたけれど、確かにその通りかもしれない。大塚さんがかけるアルバムのリズム、ビートの傾向は、明らかに私好みの黒っぽさがある。

思わず連想したのは、私が何とか選曲テクニックを盗もうとしてどうにもその秘密がわからなかった渋谷『メアリー・ジェーン』の名物店主、福島さんのことだった(現在は松尾さんが店を引き継いでいる)。もちろん、アヴァンでならしたジャズ喫茶、旧メアリーの選曲と大塚さんのクラブ選曲は違うのだけど、心地よいリズムで繋ぎ、要所要所に場の空気を乱さないギリギリの「カッコいい異物」をうまい具合に挟み込んで両者を生かす手際は、ちょっと似ているのでは、と思ったのだった。それを可能にしているのは、おそらくお二人に共通するジャンルにこだわらない「引き出しの多さ」と、耳の良さだろう。

私は、人気女性DJ大塚さんのイヴェントを体験した音楽ファンが、「アーサー・ブライスって、いいじゃない」とか、「オーネットって、カッコいいよね」って思ってくれれば、ジャズシーンの活性化に大きな役割を果たすこと間違いないと思う。

というわけで、私はいっぺんで大塚さんのファンになりました。いーぐるでのイヴェントも実に楽しみ。