4月13日(土)

com-post同人の柳樂さんとは、com-postクロスレビューはじめいろいろな場面で音楽の話をしてきたが、正直、いまひとつ良くわからないところがあったのは事実だ。それを私は世代の差、あるいは聴いて来た音楽の違いと理解し、そのズレを積極的に面白がってきた。

とは言え、「どうしてなのかな?」と探求する気ももちろんあって、「いーぐる連続講演」あるいは荻窪「ベルベット・サン」における柳樂さんの発言を注目してもいたのである。ところが、そうした際はどうしても他の発言者に対する気配りからか、柳樂さんはあまり「自己主張」をしない。

そうした経緯の中での初めての「ピンでの登壇」、私をはじめcom-post同人(オヤジ)達は「中山康樹さんを俎上に乗せたりして大丈夫かよ?」といささか心配顔でいーぐるに終結した。

結果は賛否両論あれど大好評で、まずは「ピン芸人」として立派な「独り立ち宣言」に成功したと言えるだろう。私の個人採点は100点満点。その理由は選曲が良く、主張に一貫性があり、なおかつその主張に説得力があったからだ。

その結果、つい最近com-postでクロスレビューしたロバート・グラスパーの『ブラック・レディオ』(ここでも山本さんと「いーぐる掲示板」上で「論争」となった「Black」が使われているのは面白い)の持つ音楽的意味合いが、今まで以上に良く理解できるようになった。

具体的に言えば、柳樂さんがキーワードとして設定したWeldon IrvineからJamaican Catsらを経てグラスパーに至る「音楽のテイスト」の流れ、一貫性が、私のようなヒップホップ1年生にもハッキリと見えてきたのである(マイルスだけはその異質感が浮き彫りになり、中山説の特異性が見えちゃったというオマケはあったのだが・・・)。

とは言え、何事も「わかるほどにナゾも深まる」って奴で、改めて「ヒップホップ」の奥の深さを思い知らされたのも事実。象徴的だったのは、今回一番コワイお客様である、近日中に『ヒップホップ〜黒い断層と21世紀』(青弓社)出版記念講演を行う、関口義人さんの「柳樂さんの見方はジャズサイドからの発想だ」というスルドい指摘。

私などはてっきり柳樂さんの聴き方はクラブカルチャー寄りと思っていたのだが、その方面の事情に詳しい関口さんに言わせると、講演の趣旨自体が「ジャズ側からの見方」だそうで、「へえー」と不思議に思ったのだった(この件についてはいずれジックリと詰めて行きたいと思っている)。

柳樂さんの説明によると、クラブカルチャーと言っても、「おネエちゃんをナンパしにくる層から、単に踊りまくる連中、そして少ないけどじっくりと音楽を聴きながら元ネタなどバックグラウンドを探るファン」まで、実に多様なみなさんがおいでになるそうだ。そして、柳樂さんは、「今回はあまり語られることの無い“ジックリ派”の見方」を紹介したと言う。

素敵な講演の勢いを駆った打ち上げでも話は盛り上がり、ファンの若い方々たちを交え、今までヒップホップがらみで講演をお願いした中山さん、大谷さん、原さん、大和田さん、町田さん、そして、com-post主催の座談会にご参加いただいた磯部さんらそれぞれのヒップホップに対する「スタンスの違い」について皆さん方の忌憚の無い意見を拝聴し、「これは奥が深い」と改めて感心した次第です。

結論として、「ピン芸人」として柳樂さんにはこれからも「いーぐる連続講演」はじめさまざまな場面で大いに活躍していただきたいと切に願う次第であります。