2月14日
朝日カルチャーセンターの講座、ちょっと趣向を凝らし、生徒さん方のご意見を聞いてみることにした。たとえば、チック・コリアの『A.R.C.』(ECM)《ネフェルティティ》をかけ感想を尋ねる。そうすると「意外性はあるけれど、キチンと落としどころを考えている」という鋭いご意見やら、「まったくお手上げ、わからない」というような率直な返答が返ってくる。ファンのナマの声に接するのは大事なことだと実感する。
講座終了後、直ちに「いーぐる連続講演」。今日は、鈴木さんのアルテス・パブリッシングから出されたおおしまゆたかさんのCD付翻訳書、『聴いて学ぶアイルランド音楽』出版記念講演で、タイトルは「アイルランド音楽の名盤を聴く」。正直に言ってジャズファンが来てくれるかちょっと心配なところもあったけれど、大成功。おおしまさんファンと思われる方々、アイルランド音楽ファン、そしていーぐるの常連さん方が満遍なく客席を埋め、総勢39名という上々の入り。内容も素晴らしく、ジャズ喫茶でアイルランド音楽というのはいささか冒険だったけれど、やってよかったと大満足。
予想通り、最初の数枚は「全部同じ」に聴こえ、内心、「ジャズを初めて聴いた人も、きっとこうなんだろうなあ」と思いつつ、耳を注意深く「旋律の繰り返しの細部」に集中する。すると、だんだん自分なりにこの音楽の「聴き所」みたいなものが見えてきた。フィドルやら、初めて名前を聞く楽器群が高音域で繰返す旋律が次第に高揚していくところなど、ジャズで言えば、マイルスが決め所でハイノートをかますのと似ているかもしれない。
メロディに神経が行っちゃうと「同じ」なんだけど、楽器の音色やら演奏の“グルーヴ感”に注目すると、シロウト耳にも「気持ちよさ」が伝わってくる瞬間があるのだ。予想以上の音の良さ(おおしまさんはじめ何人かのお客様から当店のオーディに対しお褒めのことばをいただいた)に聴き惚れ音楽に没頭していると、思わぬところで演奏が終わるのでアセってCD操作のために立ち上がる。これには少々困った。ジャズなら初めて聴く演奏でもエンディングは予想がつくが、アイルランド音楽はいつ終わるのか初心者にはまったくわからないのだ。まあ、これは嬉しい困惑。
打ち上げの席で話題となったのは、渋谷道玄坂百軒店にあった「ブラックホーク」に年代は違うがおおしまさんも私も通った話。私はジャズ喫茶時代でおおしまさんはロック喫茶になってからだが、あの店のマニアックな雰囲気が懐かしい。単純な性格のワタクシは、講演の内容が良いと調子に乗って鯨飲馬食しちゃうのだが、おおしまさんは2次会まで付き合ってくれ、その場でアイルランド音楽特集の2回目、映像編をやっていただくことが決まった。日時は5月30日(土)午後3時30分から。これは楽しみだ。