7月25日(土)

モードという言葉はジャズファンなら一度は聞いたことがあるだろう。しかし、正面きって「モードとは」と質問され、理路整然と答えられる人は少ない。今回の村井さんの講演はその疑問の的確な回答になっていた。
マイルスの『カインド・オブ・ブルー』から《ソー・ホワット》をかけ、そこからマイルスがイメージしていたという、アフリカン・サムピアノを紹介、そして、エキゾチシズムとモードの関係をたどるべく「元祖モード」、エリントンの《キャラヴァン》に行くという構成が素晴らしい。
以下、インド音楽とモードという切り口でコルトレーンの《インディア》、モーダル-コーダル曲の典型としてハービー・ハンコック『カルテット』から《ザ・ソーサラー》など、具体例を示しながらの解説は実にわかりやすい。選曲、解説の適切さは、さすが真打登場という感じだ。
ところで個人的な感想だけど、一番コーフンしたのは、なんとヌスラット・ファティ・アリ・ハーンの《カッワーリー》。もちろん非ジャズ。参考音源なのでフェードアウトだったが、これ最後まで聴いていたら入信しちゃったかもしれない、と言うのは冗談だけど、とにかく信仰の力は凄かった。さすがのコルトレーンもちょっとかなわなかったなあ。
また、同じくジャズではないけれど、ブルガリアン・ポリフォニーも、濁ったような澄んだようなフシギなハーモニーが心地よく、それがジャズ用にチューニングしてあるはずの「いーぐる」のオーディオ装置でも、意外なほど綺麗に再生されたことに驚いた。まあ、以前おおしまさんの講演の時も、思いのほかアイルランドの歌声がうまく再生され、おおしまさんからもお褒めの言葉をいただいたが、最近のJBLはオールラウンドな再生が可能になったようだ。
選曲の良さとも相まって、このあたりからすっかりオーディオマニア的聴き方に没頭してしまったが、それには村井さんが今回の講演のため特別にさまざまなタイプの高音質CDを持参してくれたことも大きい。印象に残っているのはソニー盤で、ウエザーの『ブラック・マーケット』、菊地の『ススト』は明らかに最初に出た音源より音質が向上している。とは言え、某社の某CDなどは高域がカットされたような不自然極まりない音質で、一体どうしちゃったんだろうというような問題物件であった。まさにオーディオは「聴いてみなけらやわからない」ですね。
面白かったのは、最後に今com-postでクロスレビュー中のクリス・ポッターがかかった時で、いろいろ聴いたけど、「ジャズでは」、今日はこれが一番と個人的感想を抱いたことだった。