4月17日(土)

今日のいーぐる連続講演は荻原和也さんの「ショーロの午後」、私は大きなミスをしてしまった。参加者の人数見積もりを大きく見誤ったのだ。この手の講演を400回以上も続けていると、予約を取らずともだいたいの数は頭に浮かぶ。事前の予測では、いつもの平均値を少し上回るだろう、という感じ。スタッフの手配も、用意するコーヒーもそれに合わせた。
それが大違い。平均値どころか今年になっての最高人数。当然、サービスも行き届かず、コーヒー、ケーキなどもアッという間に売り切れ、急いで作り足す始末。この場をお借りして、当日お越しくださったお客様方、そして荻原さんに深くお詫びいたします。
まあ、お客様方もいつものジャズ人種とは少し毛色が違う。上品で落ち着いた方々が多い。とりわけ印象的だったのは、年配の男性がどうしてジャズ喫茶でショーロをやるのかというご質問。忙しさもあってあまり巧く答えられず、「面白そうなものはなんでもやります」と実に適当な返答。これも申しわけないことをいたしました。
このお客様も含め、年配の紳士が何人かおられたが最後までじっくりと音楽に聴き入り、要所要所でメモを取っておられる。なんでももうお一方の紳士は、ブラジル音楽の世界では名の知られた著名人のよう。著名人といえば、音楽評論家の北中正和氏、真保みゆき氏、そして6月5日には久しぶりにいーぐるで連続講演をやっていただく関口義人さんなど、多くの音楽関係者がおいでになられた。荻原さんの人脈は実に幅広い。
肝心の講演内容も荻原さんのていねいかつ行き届いた解説で、ショーロという名前だけは聞いていてもその実態を良く知らない音楽のアウトラインは何とかつかめた。しかし、正直まだアウトラインであって、深く中身を理解するところまでは行ってない。まあ、おおしまさんにお願いしているケルト、ヨーロッパ系の音楽だって何回か聴くうちに次第に面白さが見えてきたわけで、これからが楽しみ。
時代を追って紹介されたが、インスト音楽ということと、南米音楽はなんとなく耳にしているので、最初から違和感はなかった。しかし、じゃあショーロの特徴はと言われると良くわからない。それがなんとなく見えてきたのは後半になってから。私も知っているラグタイムの名曲《ジ・エンターテイナー》をショーロで演奏したものを聴いて、ほんの少しこの音楽の輪郭がつかめたような気がした。ごく大雑把な理解ではやはりリズムが面白い。サンバに似た引っかかるようなシンコペーションがこの音楽の特徴のように思える。まあ、シロウトの感想なのでかなりいい加減だが、そのうちもう少し様子がわかってくることだろう。
なるほどと思ったのは、私たちはサンバ・カーニバルなどの印象からブラジル音楽というと陽気一辺倒と思い込んでいるが、実はショーロにもサウダージというのだろうか、ちょっと翳りのあるマイナーな気分もあるという。
質問コーナーでは関口さんが、なぜショーロではほとんどヴァイオリンが使われないのかとの質問を荻原さんにする。いろいろの理由が考えられるが、ショーロはかなり複雑な技巧を使うので、クラッシックのテクニックが無ければ弾きこなせないが、クラシックのヴァイオリニストはショーロを一段低く見ているのであまりやりたがらないのではなかろうかというのが荻原さんの答えだった。
ともあれ私の「ジャズ耳」からすると、一番印象に残ったのは切れがよくアクセントの効いたリズムで、これは気持ちよい。最初からこの音楽に違和感が無かったのは、どうやらこのあたりに原因がありそうだ。