9月4日(土)
ちょっと新譜特集の趣向を変えてみた。このところ益子さんにお願いしてきたのだが、得意分野のニューヨーク・ダウンタウンシーンについてはずいぶん勉強させていただいたので、少し幅を広げてみようとcom-postメンバー全員で注目作を持ち寄ることとした。また、com-postでクロス・レビューしたアルバムのうち、評価の分かれた作品を俎上に乗せ、メンバー全員で意見交換するという新趣向も試みる。
結果は上々で、従来クオリティは高いものの若干モノトーン気味だった選曲傾向が当然のように多様化した。特に原田さんの挙げた「ヨーデル・ジャズ」などはまったく初耳ながら、実に快適。ただ、質疑応答の場でいっきさんが言っていたように、ふつうの人が「ヨーデル・ジャズ」と言われたらまず手を出さないだろうというのもその通りで、内容が素晴らしく、しごくまっとうかつ斬新な演奏だけに、もう少し違った紹介方法を考えたほうが良いのではないかという意見には、耳を傾ける必要があると思った。
同じことは八田さんのジューイッシュもの、須藤さんのニューオルリンズ風ジャズにも言えて、確かにその通りなのだけど、そうしたくくり方は、仮に音を聴かなかった場合、相当内容を誤解される可能性が無きにしもあらずだろう。
林さんのデヴィッド・シルヴィアンは私も凄く気に入ったのだが、村井さんのブライアン・ウイルソン同様、ふつうのジャズファンにとっては少々距離がありすぎるのでは、といういっきさんのご意見も、またしかり。どうにもかたくなな「ジャズファン」のアタマをマッサージするのは、私たちcom-postメンバーに与えられた役割だろう。
私の挙げたヴィジェイ・アイヤーのソロと益子さんのジェイソン・モランは、いっきさんに言わせると共にニューヨーク派で、メンバー中唯一「ふつうのジャズ」ということになるらしい。まったく意識しなかったが、言われてみればそうかもしれない。知らないうちに影響されているんですね。
クロス・レビュー討論会はいろいろ意見が出たが、メルドーについては「長すぎる、2枚目はいらない」という意見が大勢を占めた。コールマンについてはヴォーカルに対する意見が分かれ、原田さんの「あれが無ければよかった」から、私の「別に気にはならないが、けっこうモノトーン」という意見まで。またドラムのタイソン・ショーリーが良いという意見に対し、私は個人的には好きなドラマーだが、コールマンには合っていないという立場など、実際に面と向かって話すといろいろ面白い話がきけ、この試みは村井さんのアイデアだが今後も続けたい。
猛暑のためちょっとお客様は少なかったが、おいでいただいた方々の評判は良かったので、これからも新譜特集はこのスタイルで行こうと思う。今後はご参会のお客様の新譜に対するご意見もいろいろお聞きして会を進めようと思うので、次回はより多くのお客様のご来会をお待ちいたしております。