8月20日(土)

マーク・レヴィンソン23.5Lの冷却フィンを手で握り、ボクシングのカウントの要領でゆっくりとカウントする。ワン・トゥー・スリー・・・、ファイヴまで数えられれば、まぁ大丈夫。しかし、フォー辺りで熱くてガマンできなくなって手を離すようなら、やむを得ず音量をホンの少し下げる。

ジャズなら音量でパワーアンプの保護回路が働くようなことはまず無いが(その前に耳がイカれちゃう)、ロックやヒップホップなどは音量としてはさほどに感じられなくとも、トンでもない低域がタップリ仕込まれていることが少なくない。

オーディオマニアならご存知だと思うけれど、人間の耳に付く中高音域は音量の割りにアンプのパワーは食わないが、さほどうるさくなくとも、低域は消費電力波形の積分値が大きいのでけっこうアブない。ましてや人工的に波形を歪ませたエレキベースなどは、ピークが平坦ないわゆる矩形波が含まれており、これは聴感上さほどでは無くとも恐ろしいほどパワーを消費するので注意が肝要だ(現に以前行ったビル・ラズウェルのときはすぐに触れなくなるほど熱くなった)。

「大音量でロックを聴く会」その5は中山康樹さんの新刊『伝説のロック・ライヴ名盤50』(講談社文庫)の発刊記念を兼ね、中山さんの著書の即売も行った。やはりロックは大音量が似つかわしい。というか、ものによってではあるけれど、大半のロックは音量がショボいと本当のよさが伝わりにくいようだ。

ジャズもそうだけど、ロックもまたライヴならではの魅力がある。それは音質などの録音状況のマイナス点を補って余りあるもので、ライヴマニアがさまざまなブートを渉猟する心理は分からなくもない。それはナマものの迫力とも言えるし、聴衆との一体感が醸し出す場の高揚感でもあるだろう。

また、ライヴはミュージシャンの日常というか本音を曝け出すケースもままあって、そこがマニア心をくすぐるという面もあるだろう。スタジオ盤で作られた「伝説」「物語」をライヴがあっけなく覆す場面など、音楽について語る者にとっては非常に興味深い。個人的には「懐かしさ」という切り口で聴けるものと、けっこう現役感覚の強い音楽の違いがなにに由来するのかいささか気になった。