11月17日(土)

ジャズ喫茶育ちというか、私などはジャズ喫茶やってるんだからジャズ漬と言った方が良いような人間にとって、メインディッシュは50年代ハードバップに60年代新主流派、そして時折自らに「気合」を入れるためにビバップやらフリーを聴くというパターンが多いような気がする。

そこにビッグバンドのようなものが入る余地はあまり無い。だから今回の山中さんによるダーティ・ダズン特集は非常に面白かった。というのは、ニューオルリンズのブラスバンドから始まったとされる「ジャズ」の「原型」を、彼らは「冷凍保存」のようにして現代に蘇らせているようなところがあるからだ。

もちろんその後のジャズは大きく変貌し、かなりダーティ・ダズンの音楽とは距離が開いちゃったようなところもあるけれど、だからこそ見えてくるものもある。面白かったのは副題に「ニューオルリンズからの飛翔と回帰」とあるように、彼らの音楽がロックやらファンクなどいろいろなものの影響を受けつつ、再び伝統的なスタイルに回帰しているようにも見えるところ。これってジャズ自体が辿った道筋と同形だと思った。

わが店にも初期のアルバムが何枚かあるけれど、それ以降の彼らの変遷には目を見張るものがある。ともあれ、行進しながら演奏できるように考えられた楽器の特徴、個性を逆手にとって、フツー「歩かない」ジャズ・バンドには無い独特のスタイルを生み出したダーティ・ダズンの面白さが満喫できました。

それにしても、十数キロあるというスーザフォンを自在に駆使し迫力十分の重低音を出す彼らのサウンドは腹にズンと来ますね。個人的にはマーヴィン・ゲイの曲目をカヴァーした演奏が気に入りました。ナマで聴けたらもっと凄いんだろうなあ。