1月31日(土)

グレートフル・デッドの名前はもちろん知っていたが、具体的にどんなロック・バンドだったのかというとほとんど答えられない。まあ、ジェリー・ガルシアがオーネットと共演した『ヴァージン・ビューティ』(epic)は聴いているけれど、それぐらい。

だから、おおしまゆたかさんによるデッドの講演は新鮮な発見に満ちていた。まず、1960年代後半にアメリカ西海岸で起こったフラワー・ムーヴメントに近い位置に彼らがいて、その関係で、同じく西海岸文化の中で注目されたチャールス・ロイドの音楽から影響を受けていたことなどは初耳。

彼らの初期の音楽はまさに「あの時代」の空気を感じさせるもので、懐かしい気分になる。他方、ジェリー・ガルシア自身の演奏はかなり本格的なジャズで、オーネットとの共演自体が意外でもなんでもなかったことが見えてくる。そう言えば、当時ロック・ギタリストと思って聴いてみてもオーネットの音楽と何の違和感もなく共演していて、決して悪い意味ではないけれど、「べつにふつうじゃん」と思ったのを覚えている。

後半にはデヴィッド・マレーやブランフォード・マルサリスらとの共演も登場し、彼らとジャズマンたちの交流がごくふつうに行われていたことを知る。それと同時に二つのことが頭をよぎった。グレートフル・デッドはアメリカではかなり有名なグループなのに、あまり日本では聴かれていないことの不思議。そして、そのこととも少しは関係するのかもしれないが、今一度ロックとジャズの関係を見直してみるのもおもしろいのでは、という感想だ。

というのも、「今の耳」で聴くとガルシアの音楽はすべてではないけれど、ものよってはかなりジャズに接近しており、そのあたりもう少し掘り下げてみたら面白いのでは、ということである。

打ち上げの席でおおしまさんから面白いことを聞いた。それは日本でデッドがいまひとつ話題にならなかったのは、中村とうようさんがデッド嫌いだったからという話。私はそちら方面の事情には疎いけれど、さもありなんとは思いました。とうようさんの功績は認めた上で、かつての「大御所」の影響力を再検証してみたら、いろいろと見えてくるものがあるかもしれない。

そしてこれはロック・シーンだけでなく、ジャズ界でも同じようなことがおそらくあるのではないだろうか。そういう意味でも、先ほど触れたジャズとロックとの関係も、従来の定説とは違う見方が出てくるかもしれない。

ともあれ、お客様の入りも上々で、次回のライヴを丸々聴くイヴェントが楽しみとなりました。おおしまさん、次回もよろしく!