<いーぐる講演 2017年5月20日 特集:コーネル・デュプリー>
選曲・論者:高地明 聞き手:佐藤英輔
どうだ、愛情たっぷり声援の歌伴、そして一発勝負の果敢にソリッドでガッツあるギターを求めれば、こーなるデュプリー!だ。ヤワな日本御用達フュージョンは全面排除!
●オープニング
1. Eddie Cleanhead Vinson: Straight No Chaser 4:25
(Album “You Can’t Make Love Alone” Mega M31-1012)
ジャズの世界でも活躍したアルト・サックス奏者(名ブルース・シンガー)による、71年6月スイス・モントルー・ジャズ・フェスでのライヴ。セロニアス・モンク名作を、テキサス・シャッフル・ビートでレア・グルーヴ仕上げ。
○前半はすべてヴォーカル作品
●歌伴で味わうメロウ・グルーヴ
2. Joe Bataan : Chico And The Man (Main Theme)3:40
(Album “Afrofilipino” Epic/Salsoul KE 33471)
ラテン・ソウルの貴公子シンガーを、グルーヴィーな小技多数で気持ちよく盛り立てる。75年、ニューヨークでサルサ/ラテン真っ盛りの時の作品。
3. Brook Benton : Rainy Night Georgia 3:29
(同名のアルバムよりシングル・カットCotillion 44057)
ダイナ・ワシントンとの共演作もあるヴェテランR&Bシンガー70年初頭のナンバー・ワン・ヒットに大貢献。
4. Family Circle : I Hope You Really Love Me 2:27
(シングル Sky Disc SD 644)
ニュージャージー州の黒人都市ニューアーク出身の全員10代の兄弟ヴォーカル・グループ72年作。バーナード・パーディー、ゴードン・エドワーズらとともに同胞の子供たちのために腕を振う。
5 .Margie Joseph : Let's Stay Together 3:26
(Album “Margie Joseph”からのシングル・カットAtlantic 45-2954)
メンフィス・ソウル大傑作、アル・グリーンのナンバー・ワン・ヒットを、アトランティック期待の女性シンガーに即カヴァーさせ(72年9月)、ニューヨーク・サウンドにしてしまった。リャード・ティーのオルガン/ピアノも秀逸。リズム・ギタリストはデイヴィッド・スピノザ。
6 .The Reflections : How Could We Let The Love Get Away 4:15
(収録Album “Love On Delivery”の先行シングル Capitol 4078)
ニューヨークのソウル・ヴォーカル・グループ75年作。極めて地味だが、コーネル流メロウ・ソウルの基本となるヴォリューム・コントロールの妙技に注目を。
7. Aretha Franklin : First Snow In Kokomo 4:04
(Album “Young, Gifted And Black” (Atlantic SD 7213)
女性ソウル最高峰アリサ・フランクリンのギタリストと言えば、まずコーネル。名演多数だが、入魂の美で72年発表の本作を選出。ダニー・ハサウェイもオルガンで参加した名門アトランティックの昇華となるサウンドを。
●原点はTボーン・ウォーカーのブルース・ギター
8. Louis Howard : You're Too Much 2:45
(シングルImpact I-4074)
コーネル最初期の参加作品で、1963年テキサス州ダラス録音のローカル・シンガーが歌うブルース・シングル。
9. Bama : Welfare Slave 5:39
(Album “Ghetto Of The Mind” Aware 1001)
黒人社会の奥深くから発せられたストリート詩人によるポエトリー・リーディング。ここでのドラムスのバーナード・パーディーがスティーヴ・ガッドに変わればそのままスタッフ、というメンツで、そのメッセージをサウンドの素晴らしさで支えていく。72年作。
10. Esther Phillips : I'm Getting 'Long Alright 5:56
(Album “Burnin’” からのシングル・カットAtlantic SD 1565)
屈指の女性ブルース・シンガーの一人、エスターの70年ロサンジェルスの黒人クラブでのライヴから(キング・カーティスがプロデュース)。これだけネットリと濃厚なブルース臭で彼女に絡めるのはコーネルだけだ。
●アンクル・ファンキーが愛でた女三人
11. Ellerine : Human Feeling 3:17
(Album “Elleine” Mainstream 377)
ここから3曲は、近年クラブ/フリー・ソウル人気が高い女性シンガー3人を。まず、女優/コメディエンヌとしても活動したエレリンは、高名なウェイド・マーカスのアレンジ/指揮のもと、コーネルが執拗にファンク・ビートで煽り立てるこの72年作品を。
12. Esther Marrow : Woman In the Window 3:14
(Album “Sister Woman” Fantasy 9414)
やりたい放題のコーネル/チャック・レイニー/リチャード・ティー/バーナード・パーディーこそがソウルの鉄壁サウンドであることを見せるつける72年作。バック・コーラスは6で登場のザ・リフレクションズが担当。
13 .Camille Yarbrough : Take Yo’ Praise 4:11
(Album “The Iron Pot Cooker” Vanguard VSD 79365)
シンガーというよりも、作家/詩人/俳優として活動する女性だが、この75年発表LP収録作品は、ファット・ボーイ・スリムが98年にサンプリングしたということで知られている。行き当たりばったりの、その場限りの寸劇のような緊張感あるセッションで、ギターの露出は物足りないくらいだが、これがコーネルの「程を知る」美学だ。
●コーネルだけのカッティングの妙技
14. J.C. White Singers : Take Chance 4:09
(Album “Reflections Of Divine Love” Locus LOC 701)
ニューヨーク周辺での地元コミュニティ貢献活動としてのゴスペル作品へ参加の好例。殆どリズム・カッティングに徹して、ビートを高揚させてコーラスを煽っていく。ギターに余計なソロは必要なし、まずはリズムを刻め!の素晴らしき見本だ。
15. Leon Thomas : L-O-V-E 2:51
(Album “ Blues And The Soulful Truth” よりシングル・カット Flying Dutchman FD 26025)
スピリチュアルなジャズ・シンガーとして再評価されているトーマスが、ラテン・ロックのサンタナに参加したのと同じ73年に発表した作品で、現在クラブ人気も高し。コーネルが入るとファンキーの勢いがまず違う。
16. Dakota Staton : Blues For Tasty 4:08
(Album “Madame Foo-Foo” Groove Merchant GM 510)
大御所女性シンガーがコーネルのテキサス・シャッフル・ビートでノリまくるこの快感、これぞブルース・グルーヴの粋だ。歌詞も”Goin’ To Chicago”や”Everyday I Have The Blues””Goin’ Down Slow”といったブルース・スタンダードの歌詞をつなぎ合わせた、キーだけ決めてのまったくの一発勝負作だ。72年作。
○後半はすべてウンス作品で
●これもコーネルの原点、テナー・サックス六番勝負!
17. Charles Williams : Boogar Bear 4:48
(Album “Trees And Grass And Things” Mainstream 345)
同じく71年の録音となる名盤『ダニー・ハサウェイ・ライヴ』の最終曲Voices Inside (Everything Is Everything)でのソロを想わせる、鋭角のスリル満点のプレイ。
18. Hank Crawford : You’re The One 4:20
(Album “It’s A Funky Thing To Do” Cotillion SD18003)
長年アトランティック(コティリオン)看板サックス奏者として活躍したこのハンクとコーネルの競演は他にも多くあり、KUDOレコード作品も人気が高いが、ファンキー・ビートの気持ちよさで71年の本作を。
19. The Kingpins : In The Pocket 2:32
(シングル Atco 45-6516)
自己のバンド、キングピンズに招いて若きコーネルを育てたサックス奏者キング・カーティス67年作品。カーティスとソウル大物ボビー・ウォマックの書下ろしオリジナルで、裏方に徹したコーネル本領発揮のジューク・ボックス御用達のダンス作品。
20. Seldon Powell : Afro Jazz 5:30
(Album “Messin’ With Seldon Powell” Encounter 3000)
ニューヨーク・シーンで活動したサックス奏者が、ここではフルートを。ギター・ソロの後ろで小さく唸り声が聞こえるが、まさかコーネル本人か? 74年の初ソロ・アルバムでの”How Long will It Last“を連想させるフレーズも一瞬あり。プロデュースとドラムスはバーナード・パーディーの、73年作。
21. Charlie Brown : (Funky) Sunny 5:41
(Album “Why Is Everybody Always Pickin’ On Me?” Contact/Flying Dutchman C-6101)
66年にポップ・チャートでも2位となった黒人シンガー、ボビー・ヘブ作品「サニー」を、あえてブラック感覚を強調したタイトルで72年に発表。リチャード・ティー、バーナード・パーディーらも参加のニューヨーク総力戦。
22. Eddie Harris : Why Don't You Quit 2:53
(Album “Come On Down!” からのシングル・カット Atlantic 45-5101)
爆音全開のエレクトリック・テナー・サックスの巨人エディ・ハリスに対するコーネルをシングル・エディットで。70年作。LPのフル・ヴァージョンは6分36秒。
●ワウワウ・ギター名人でもあったコーネル
23. Pucho & The Latin Soul Bros. : Don't Mind The Tears 3:30
(Album “Super Freak” Zanzee SZLP 2603)
コーネルはサルサ/ラテンの大物エディ・パルミエリ率いるユニット、ハーレム・リヴァー・ドライヴへのゲスト参加が知られているが、その美しく鳴らすワウワウ・ギターの腕を乞われての、やはり大物であるこのラテン・パーカッショニストのグループとの72年セッション作品も人気が高い。
24. Johnny Pate : That's Ain't Too Cool 3:45
(Album “Outrageous” MGM SE 4701)
ジャズ・ベーシストの活動以上にプロデューサー/アレンジャーとしての評価が高いジョニー・ペイトによる70年発表のセッション・アルバムから。フルートのジェローム・リチャードスンとの対決ものとなる作品で、ワウワウだけでなく、リズム・カッテヒングの勢いも凄い。ジャケット裏に写る写真では、珍しくフル・アコースティックのエレキを使用している。
25. Gene Harris of The Three Sounds : Listen Here 5:25
(Album “Gene Harris of The Three Sounds” Blue Note BST 84423)
このジーン・ハリスのピアノ・トリオは必要に応じてギタリストを立てたが、この69年作ではエディ・ハリスの名作にファンキー色濃くするために(?)コーネルのワウワウを起用。
●口直しのメロウ・ジャズ・グルーヴを
26. Larry Ridley : Never Can Say Goodbye
(Album “Sum Of The Parts” Strata-East SES 19759)
60年代から活躍するジャズ・ベーシストが75年に硬派ストラタ・イースト・レーベルから発表したソロ・アルバムで、ジャクスン・ファイヴの前年大ヒットをカヴァー。ソプラノ・サックスはサニー・フォーチュン。コーネルが解釈したマイケル・ジャクスンがこれだ。
●締め●私が一番好きなコーネルはこれ。
27. Donny Hathaway : We’re Still Friends 4:45
(Album “Live” からのシングル・カット Atco 45-6880)
71年10月29日ニューヨーク・マンハッタンのクラブ、ビター・エンドでの収録名盤ライヴ・アルバムから。圧巻のソロばかりが話題となるが、絶妙なオブリガード等、同志ハサウェイへの心配りにも感じ入りたい。
●番外編として(2011年ソロ・アルバム“Doin’ alright” P-VinePCD-25132から、唯一の選曲。未発表のテキサス・ブラス・サウンド・ヴァージョン)
28. Cornell Dupree with the Texas Horns 4:50