3月29日(木)
私の周りの友人たちの間で話題になっている、中山康樹さんの新刊『最後のジャズ入門』(幻冬舎新書)読了。ヒジョーに面白い。「挫折し続ける初心者のための」とサブタイトルにうたっているが、これは相当ジャズの世界に首を突っ込んじゃった人間が「そうなんだよなあ」とうなずくたぐいのホンだ。
まあ、詳細は実際にお買い求めいただければわかることだが、一番興味を引いたのは康樹さんのホンネが見事に語られているところだ。これを読んで思ったことだが、彼と私とではビミョーにジャズ観は異なっているのだが、こと、音楽に接する姿勢では非常に近いものがある。
カンタンに言ってしまえばアートに対するリスペクトということなんだけど、この、音楽に接する原点みたいなものが近頃なおざりにされていることに対する康樹さんの怒りは、非常に良くわかる。同感だ。
「ビミョーに異なるジャズ観」といっても、対象に対する見方にそれほど違いは無い。ただ、どちら側から光を当てるのかといったたぐいの話である。具体例を一つ挙げれば、マイルスに対し、康樹さんはあくまでマイルス個人の音楽として語るのに対し、私はジャズの側からマイルスという存在に光を当てようとしている。
この、康樹さんのミュージシャンに即した語り口は音楽評論の王道で、私の場合は若干距離を置いて対称を観察しているようなところがある。とはいえ、音楽そのものに対する愛は、私も人後に落ちないつもりだ。