6月20日(土)

中山康樹さんの素敵な新刊、『ミック・ジャガーは60歳で何を歌ったか』(幻冬舎新書)の刊行を記念したロックイヴェントは、大好評のうち終了した。私にとってもずいぶん発見があった。まず、この本のテーマである、“オジンロッカー”の存在意義が音で立証されたこと。
つまり、魅力的で説得力ある中山さんの文章によって、「ことばでは」大いにその気にさせられた「老人ロック」ならではの意味が、単なる“懐メロ”ではなくて、今の、年輪を重ねた彼らでしか表現できない種類の音楽だということが、スジの通った一貫した選曲で、音でも納得させられたのである。それにしてもディラン、ずいぶん変わったんですねえ。
次いで、ちょっと自慢めくが、ジャズに合わせてチューニングしてあるいーぐるの再生装置で聴く大音量のロックが、思いのほかよい音で鳴ったこと。その結果、たとえば私たちの世代にとっては耳にしみこんでいるアニマルズの《朝日の当たる家》が、想像以上の良い録音であったことや、オルガンソロの出来の良さなど、演奏自体のレベルの高さを再発見した。それにしても、エリック・バードンの切迫感に満ちた危険な声の迫力は、ロックの真髄ではなかろうか。
そして、ちょっと個人的関心事になるが、固めうちで「中山セレクト」を聴くことで、中山さんのロック観がかなり明瞭に理解できたことである。要するに王道主義、「マイルス命」で「ブルーノート主義者」の中山さんらしい発想で、ごちゃごちゃ言わず一番旨いものを喰え、ということだ。これはまったく同感。
もう少し具体的に言うと、中山さんは「声の魅力」をロックの大きなポイントとして聴いており、これはジャズファンが、結局ミュージシャンの出す楽器の音色の魅力に惹かれることと同じである。私に言わせれば、中山さんはやはりジャズ的なロックの聴き方をしているのだ。
それにしても、冒頭で流されたミック・ジャガーの、ロッカーでしかないカッコ良い映像は、改めてストーンズの偉大さを知らしめてくれた。中山さん、これは続編やるっきゃないですね。