2月5日(土)

ヒップホップというジャズファンには馴染みの薄いジャンルがテーマなので、果たしてどれだけのお客様がおいでになるのか、少しばかり危惧していたのだが、これが大外れ。なんと、講演開始のはるか前から多くのお客様がおいでくださり、スタート前に早くも満席。おかげさまで用意したコーヒーがあっという間に無くなり、あわてて作り足す始末。そのため、後からおいでのお客様方のご注文が大幅に遅れてしまいました。この場を借りて深くお詫びいたします。

非常に興味深いのは、タイトルから想像されるように若い方が多いのは当然としても、想像以上に年配のお客様がおいでくださったことだ。最初「間違っていらっしゃったのかな」などと心配していたのだが、これも大外れ。みなさん最後まで熱心に中山さんの話に聞き入っている。やはりベテランファンも新しい音を求めているのだ。

歴史、スタイルを解説し、名盤、新譜を紹介するのも評論家の仕事だが、音楽評論の本来の役割は、多様な音楽の位置付け、相互の関係、意味を分析し、その結果として、新たな価値観を提示することだと思う。これは音楽評論に限らず、文芸、美術など、他の評論ジャンルについても言えることだろう。

今回の中山康樹さんによる『ヒップホップ学習会』は、ジャズとヒップホップという、従来異なる音楽ジャンルと思われていたものに、新たな補助線を引くことにより、両者の新しい関係性を示すという、まさに音楽評論の名にふさわしい野心的な試みだ。

ジャズはさておき、ヒップホップについてはほんとうに通り一遍の知識しかない私にとって、第1回目の今日は、「感想」のレベルを超えることは言えそうもない。とは言え、今回の講演のサブタイトルでもある「ジャズ・ヒップホップ第1号はオーネットだった!?」という部分については、1969年のワッツ・プロフェッツ、70年のラスト・ポエツを聴かせられ、「なるほどなあ」と思わせられた。そしてその延長線上で聴く、72年のマイルス《ブラック・サティン》が従来とは異なる文脈でオーネットの音楽と結びつく。

講演は4部構成で、第1部が「誕生」2部が「融合」、以下「発展と継承」「現在と近未来」となっており、それぞれ興味深く聴けた。中でも第4部でかけたマッドリブはなかなか刺激的。中山さんの言うとおり、ビバップのヒリヒリするような感覚が現在ではむしろヒップホップの方に受け継がれているという見方も、あながち無根拠ではないと思わせる。

そして最後にかけられた1937年録音の「最初のラップ」とも呼ばれるゴールデン・ゲイト・カルテットの演奏は、次回2回目の大谷能生さんと中山さんの対談による「ジャズとヒップホップはなぜ仲良しなのか〜その親和性を探る」への導入部となっていた。

つまり、ジャズの正史ではビバップ中心に語られる40年代シーンの裏側に、ジャンプであるとかジャイヴと呼ばれる一群の音楽があり、それら黒人音楽の源流とラップやらヒップホップがどう結びつくのかつかないのか。この辺りを大谷さんが熱く語るという。

関係者一同による打ち上げも大いに盛り上がり、いろいろと面白い話が聞けた。音楽評論家のなぎらさんによると、どうやらいーぐるはDJのみなさんにとってかっこうのネタ探しの場になっているそうだ。元祖DJを自認するジャズ喫茶レコード係りの私としては、嬉しい限りである。