2月8日(土)

降りしきる大雪の中、思いのほか大勢のお客様においでいただき、改めてラテン音楽ファンの熱い連帯を感じました。そして講演内容も最高。やって良かった!

マンボラマTokyo幹事長、岡本郁生さんによる初めてのソロ講演「ドミニカ音楽を聞く」、たいへんに素晴らしく、また大いに勉強になる講演でした。岡本さんには、去年の正月にモフォンゴこと伊藤嘉章さんを聞き役として「1968年にどんな音楽が流れていたか・1968燃える音!」という講演をやっていただいて以来、1年ぶり。

お恥ずかしい話だが、私はドミニカ共和国カリブ海にあることはなんとなく覚えてはいたが、具体的な位置や歴史などはほとんど知らず、ましてや音楽についてはまったく無知。しかし、そんな初心者にも実にていねいかつわかりやすい説明。なんと言っても、詳細なドミニカ関連年表、地図が配られたのはありがたい。これを作るだけでもたいへんだったと思うのですが、その効用は絶大です。

そうです、ドミニカはあのコロンブスが最初にたどり着いた島だったんですよね。大昔見た映画『1492』はけっこうショックでした。

また、たいへん失礼を承知で言えば、一見「ラテンの伊達男」風の外見にも関わらず、内容は実に精密で実証的。だからほとんど中身も知らなかったメレンゲ、バチャータに次第になじみ、後半では自然と身体が動き出す。岡本さんの説明のように、この手の2拍子系の音楽は新しいクラブ・ミュージックなどとも親和性が高いようだ。それに、もともとがダンス音楽でもあるし・・・

まあ、初めての体験なので音楽内容について論評など出来ないけれど、なんと言っても同じ傾向の音楽を固め打ちで聴く体験は重要で、なんとなくではあるけれど「ドミニカの音楽」のイメージは掴め、そしてそれはけっこう好み。というか、ワタシの中のラテンの血に少しずつ火が着いていく感じ。

個人的に気に入ったものをいくつか挙げるとEl Tiburon / Proyecto Uno (1989), La Morena / Ilegales (1994), Voy Pa’lla / Las Chicas Del Can (1992 ?), Voy Pa’lla / Anotony Santos (1991)。 最後に挙げたアントニー・サントスの声にはシビれました。

もちろんこれは岡本さんだけではなく、前述の伊藤さんやら荻原さん、そして関口さんなど、そちら方面の音楽詳しい方々による素敵な講演の積み重ねによるもの。ありがたいことだ。また、真保さんには、今回岡本さんからも説明もあったジュノ・ディアスの小説を教えていただき、アメリカ在住ドミニカ人の複雑な人種感覚について思い当たることが多かった。真保さん、ありがとうございます!

内容に戻れば、短時間のうちに「ドミニカの歴史」だけでなく、「かの地の人々の人種問題に端を発する、内面的アンビバレンス」といったかなり深刻かつ深い内容まで言及され、それが実にナットクで、「ああ、これはラテン・ミュージックを聴く上で念頭に入れておかないといけないことだな」と深く実感しました。

上から目線のような物言いでたいへん失礼かとは思いますが、岡本さんの講演、500回を越える「いーぐる連続講演」でも白眉の内容。音楽的内容の充実と同時に、その「背景・文化・歴史」について、これほど広範な学識を短時間に伝えられるのは並大抵のことではない。今後ぜひ「いーぐる連続講演」のレギュラー・メンバーとなってください! お願いします!