2月9日(土)

今日のいーぐる連続講演は、益子博之さんによる2007年新譜特集。ちょっと時期がずれているように思われるかもしれないが、昨年末行なわれた2007年ベスト盤大会で、思いのほか紹介される新譜が少なかったため、新譜の聴き所を継続的に探究、紹介している益子さんが危機感を抱き、もっと新譜を聴いてもらおうと臨時に開いた特集である。
新企画として、元「ジャズ批評」編集長の原田和典さんをゲストに呼び、益子さんと二人で、掛け合い的にアルバムの聴き所などを語ってゆく形式をとった。これが大当たりで、雑誌等では絶対に読むことの出来ない、ホンネのレビューが聞けた。このスタイルは定期化しよう。
いずれ当日紹介されたアルバムリストが発表されるが、個人的お気に入りをとりあえず挙げておく。まず、David Torn / Prezens / ECMが良かった。ちょっとノイジーなトーンのギターにテイム・バーンのアルトが切迫感を持って絡む。気持ちが良いので思わず音量を上げてしまった。次はVijay Iyer / Still Life with Commentator / Savoy Jazz 。アイヤーはシンセサイザーを使っているが、異様な気配のヴォーカルが面白い。あまりジャズ的ではないようにも聴こえるが、それはもうどうでもいい。3番目はTony Malaby / Tamarindo / Clean Feed Records。いまひとつだという声も出たが、やはり個性的という点では傑出していると思う。
こうしたニューヨークの現状を反映した演奏は、昨晩聴いたリトアニア・ジャズとは、同じジャンルの音楽とは思えないほど異なっているが、さまざまな現代ジャズの演奏を聴くことによって見えてくるものが大切なのではなかろうか。とは言え、正直に言えば、私の好みはやはりN.Y.だな。
小雪がちらつく中、熱心なファンの方々がお見えになったが、興味深い傾向として、こうした新しいジャズに注目しているであろう若いファンが多いと同時に、明らかに熟年世代の方々が熱心にメモを取りながら参加してくれたことだ。この方たちも、既成のジャズ雑誌の情報が偏っていることに気が付き始めたことの表れではないだろうか。