11月1日(土)

私にとってのカーラ・ブレイのイメージは、あの金色に輝くパッケージも懐かしい『エスカレーター・オーヴァー・ザ・ヒル』(JCOA)によって最初に形作られた。何しろジャック・ブルースリンダ・ロンシュタットまで参加しているロック・オペラなのだから、1969年当時としては尋常でない。その後、76年録音の『ディナー・ミュージック』(WATT)では、リチャード・ティー、エリック・ゲイルらを起用し、コロっと趣向を変えたが、カーラの色はやはり濃かった。
さて今回の山中さんのカーラ特集では、80年代以降のアルバムを集中的に聴いたが、傾向こそ変われ、カーラはカーラであることを再認識した。彼女は本当に表現したいものがあるから、表面のスタイルこそ変われど、音楽のテイストは一貫している。若干アクが強いので好き嫌いはあるかもしれないが、まさにホンモノの表現者と言ってよいだろう。
そうしたカーラの優れた本質を選び抜かれた選曲で示した山中さんの講演は、音楽好きなら誰しも心から満足したはずだ。私もいまさらながら、カーラという音楽家の骨の太さのようなものを実感した。
打ち上げも盛り上がり、福翔から店に戻ってのワインも弾むうち、隣の席に座ったイタリアンとおぼしき3人組に村井さんが話しかけたところ、その中の貫禄十分な紳士が半蔵門でイタリアン・レストランを経営していることが判明。また連れの若い男性は、ワインの専門家だそうだ。
私は日本語も話せるエリオさんという方に、はるか昔、六本木のニコラスでスパゲティ・ミートボールというけったいなものを食べたことがあるのだが、以前見た映画でも同じものが出てきたというようなことを話しかけた。すると彼も、そのニューヨークでイタリア人が経営するレストランの映画を見たようで、あれはイタリアの惣菜みたいなものだと教えてくれた。大して旨いものではないのだけど、何故かもうないものを食べてみたくなるのは歳のせいだろうか。