5月13日(水)
内輪の微妙な話を、当人の承諾なく、原理的に世界中のネットに繋がった人たちが読むことが出来る掲示板に書いたりすることは、私信メールの許諾なしの公開が反則であるのと同じように、やってはいけないことです。今回香田さんがされたことは、そういうことです。こうした適切さを欠いた書き込みが、場合によっては抹消される可能性があるのは、致し方ないことではないでしょうか。
こうした処置は、香田さんがご想像されるように、私の立場を守るためではなく、人間関係の機微、前後の文脈を無視し、しかも香田さんの想像を補強するような都合の良い形で、承諾も無く勝手に発言を書き込まれた、福島哲雄さんの名誉を守るためです。彼は、まさかこうした形で内輪の発言が公開されるなどとは、思ってもみなかったはずです。
私たちがジャズ喫茶を初めてまもない1970年代から80年代にかけて、私は福島さんからジャズについてずいぶんいろいろ教えてもらいました。その過程では、例の人懐こい笑顔で福島さんから「後藤さん、わかってないなあ」と言われたことなど数知れずです。また、私が『ジャズ批評』におぼつかない文章を書き始めた頃ですから、80年代の前半だと思いますが、「後藤さんの文章、難しすぎて読めないよ」などと冗談交じりで福島さんに言われたこともあります。
このような親しい関係の中で、私は福島さんからジャズの養分を得たわけですが、そうしたいきさつは近著『ジャズ喫茶リアル・ヒストリー』(河出書房新社)や、その他のエッセーなどで何度も書きました。ですからそんなことは人に隠しておきたい秘密でも何でもありません。私はあなたが想像されるような(というか思い込みたくてしかたの無い)、人の意見に耳を傾けようとしない頑固者ではありません。
とは言え、お名前とお顔が一致しない程度の関係の方から、鬼の首を取ったようにして、福島さんの発言を自分の正当性を証明するかのような形で持ち出されれば、「あなたからそんなことを言われる筋合いはない」としか言いようがありません。あなたと、私がその見識に信頼を寄せる福島さんでは、同じことを言ったとしても、受け取る側にとってみれば意味が違うということがおわかりにならないのでしょうか。
付け加えれば、そういうことをされるあなたに取り立てて悪意が無いことは良くわかります。しかし世の中には、悪意の有無とは別に、やってはいけないことがあるのです。香田さとるさん、あなたは自覚無く、あたかも福島さんが私に対して陰口を言ってるかのような誤解を招きかねない書き込みをなさったのです。それは福島さんのあなたに対する、まさか私的会話を公開はすまいという、人として当たり前の信頼を裏切ったことになるのです。あなたが私のことをどう思われてもかまいませんが、福島さんに対する裏切り行為は、深刻に反省していただきたい。