1月18日(月)

夕方、突如ベーシストのトーマス・モーガンさんがいーぐるを訪れた。私が番組制作をしているUSENの女性担当者、Kさんの古くからの友人で、たまたま来日したので「ジャズ喫茶」という場所を覗いて見たかったそうだ。偶然だが、モーガンさんは先週末に益子さんが新譜特集で最後に紹介したアルバム、Samuel Blaser Quartet / Pieces of Old Sky / Clean Feed Records で、ドラムスのTyshawn Sorey と実に面白いリズム・セクションを構成していた。私のメモには「この演奏はリーダーのトロンボーンより、サイドのドラムス、ベース、そしてギターの絡みの方が面白い」と記されている。
さっそくそのことをトーマスさんに話すと、控えめな笑みを浮かべ、いろいろとニューヨークの話をしてくれた。面白かったのは、よくリー・コニッツの家に遊びに行くけれど、彼はまったく音楽の話をしないとか、菊地プーさんからはずいぶんいろいろなことを教えてもらったなど、ニューヨークのジャズマン人脈の幅広さを実感させられる話を聞かせてもらった。
彼は見た目はごくフツウの青年で、この人があのポール・モチアン・バンドのサイドマンなのかとは、ちょっと想像できない。まあ、「私、ジャズマンです」というタグを貼り付けているわけではないのだから外見でわからないのは当然としても、最近のニューヨーク・ジャズマンはビジネスマンと見分けがつかない。プーさんみたいに、いかにも、っていうカンジではないのだ。
トーマスさんがお帰りになった後、彼らが持参してくれたアバークロンビーの新譜のトーマスさんの演奏や、ちょっと前のデヴィッド・ヴィニーのサイドなどを聴いてみると、彼、相手によってかなりスタンスを変えている。アバークロンビー盤では控えめな中でそれなりに自己主張し、ヴィニー盤ではけっこうゴリゴリ自分を押し出している。なかなかクレヴァーなベーシストだ。さすがモチアン先生やコニッツ先生の目に留まるだけのことはある。