2月1日(土)

1963年、1947年生まれの私が16歳になった年、日本で初めてとされるTVアニメ、「鉄腕アトム」(名曲です! それにしても、歌詞が谷川俊太郎とは!)が始まったと言う。つまり僕ら団塊世代は、もうTVアニメは見ませんよね。そのころワタシはもう色気づいて、ブリジット・バルドーやらミレーヌ・ドモンジョさまたちの、おフランス映画に夢中でしたっけ。

というわけで、今回紹介されたアニソンは一部を除いてほとんど知らない。もっとも、アトムにしろ鉄人28号にしろ雑誌に連載されていたころはまだ小学生だったので、もちろん読んでいる。また、オトナ向け劇画「巨人の星」やら「あしたのジョー」などは、雑誌連載当時一種の社会現象になったほどで、すでにいい歳になっていたけれど、私も含め周囲の連中はみんな読んでいた。しかし、アニメは見た記憶がない。

アニソン、思いのほか良かったです。まあ、事前の予想とはちょっと違った角度だけど、このジャンルの音楽的な質の高さは実感しました。もちろん用途が用途だけに「芸術」といったものではないけれど、匿名性を前提とした良質の「職人ワザ」の切れ味をタップリ堪能させていただきました。

記憶に残ったものを紹介された順にメモすると、大野雄二作・編曲による「ルパン三世のテーマ」はなかなかのもの。間奏の素敵なヴァイヴソロも含め、もちろんモロ、ジャズです。また同じくジャズ系では、菅野ようこ作曲によるカウボーイビバップに使われた「Tank!」の演奏が素晴らしかった。シートベルツとかいうグループだが、サックスソロなんか最近のハンパな連中よりよっぽど気合が入っている。

個人的にかなり気に入ったのは、歌・前川陽子、作曲・渡辺岳夫のコンビによる「キューティハニー」と「魔女っ子メグちゃん」。とりわけ、キレ、パンチがあってリズム感抜群な前川陽子の歌唱はそうとうの実力。また、2作ともけっこう歌詞が面白い。最初聴いた時、「こんな歌詞、コドモに聞かせていいんだろうか?」と思ったけれど、まあ、良かったんでしょうねえ。

笑っちゃったのはまるで軍歌の「行け行け飛雄馬」。「巨人の星」の主題歌だからこうなっちゃうんだろうが・・・また、歌詞が「裏読み」すれば当時(1968年)の社会状況を反映させたかのような「社会性」を帯びているようにも受け取れるのが興味深い。要するに学生運動の応援歌。

そして何といっても傑作なのは「ゲゲゲの鬼太郎」。水木先生自らのなんともトボけた歌詞が絶品。「楽しいな〜楽しいな〜」のリフレインで思わず脱力。そりゃ、オバケは会社に行かんでもいいでしょうよ。そして意外に良かったのが「新世紀エヴァンゲリオン」の主題歌「残酷な天使のテーゼ」。歌詞も含めクサさ一歩手前だけど、チャンと聴かせちゃうのはたいしたもの。曲、歌詞、そして歌唱、演奏すべてが良く出来ています。

といった塩梅で、当初内心では若干バカしていたアニソンの質の高さ、改めて実感。シロートなりに分析すれば、まず歌詞が良く聴き取れ、はじめて聴く歌でも内容が明確に伝わってくる。これはコドモ向けTV番組という条件から出てきたものだと思うけれど、改めて「歌」における「歌詞」の重要さを実感。

また、いずみたくやら小林亜星といった一流の作曲家を使っているから当然とも言えるが、個人的好き嫌いはあるにしろ、どれも実にうまく作られている。具体的に言えば、TV冒頭の少ない時間で聴き手に印象付ける手際がどの曲も秀逸。そしてほとんどの曲が、演奏、歌唱ともに手抜きが無く、かなりレベルが高い。

また、音質においても、今回ビクタークリエイティブメディアの原田光晴さんによる念入りなマスタリングということもあって、そうとうのクオリティ。こうしたことがあいまって、固め打ちで31曲ものアニソンを聴いたけれど、ほとんど飽きませんでした。

こうした面白い企画を持ってきてくれたおおしまゆたかさん、そして、須山慶太さん、またいろいろと興味深い裏話をおきかせいただいためのうさん、ありがとうございました!